辺野古移設、不毛な法廷闘争はもうやめよ


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、岩礁破砕許可を得ずに国が埋め立て工事を進めるのは違法として県が工事差し止めを求めた訴訟で、那覇地裁は県の請求を却下し、差し止めの仮処分の申し立ても退けた。

 辺野古移設は普天間の危険性を除去しつつ、米軍の抑止力を維持する唯一の方法だ。翁長雄志知事は移設阻止を掲げ、法廷闘争を展開しているが、不毛な争いを続けるべきではない。

 那覇地裁は門前払い

 訴訟で県は、埋め立て海域に漁業権が存在し、移設工事を実施するには県の岩礁破砕許可を得る必要があると主張。国は請求の却下を求めていた。

 森鍵一裁判長は、自治体などが条例や規則の適用を求める訴えは裁判の対象外とする最高裁判例を引用。「(県側の)訴えは法律上の訴訟に当たらない」と結論付けた。訴訟の中身に立ち入らず、門前払いした形だ。

 仲井眞弘多前知事は2013年12月、国の埋め立て申請を承認したが、翁長氏は15年10月、承認を取り消した。国が翁長氏を訴えた訴訟で、福岡高裁那覇支部は16年9月、承認を取り消した翁長氏の対応は違法と判断。同12月の最高裁判決で県の敗訴が確定した。この問題の決着は既についていると言える。今回の判決は、そのことを示しているのではないか。翁長氏は控訴を検討しているようだが、これ以上法廷闘争を続けるべきではあるまい。

 翁長氏は事あるごとに「辺野古に新基地は造らせないとの公約実現に向け、不退転の決意で取り組む」と繰り返してきた。

だが今年2月の名護市長選では、辺野古移設を容認してきた新人の渡具知武豊氏が、移設阻止を掲げる現職の稲嶺進氏を破って当選した。

 稲嶺氏が10年に市長に就任して以降、政府は名護市に米軍再編交付金を交付していない。移設反対にこだわるあまり、市民の生活向上を置き去りにしてきたことは否めない。稲嶺氏を支援した翁長氏も、地域振興を願う市民の声に真摯(しんし)に耳を傾ける必要がある。

 普天間の危険性除去も大きな課題となっている。昨年12月には宜野湾市の小学校に米軍ヘリコプターの窓が落下する事故が発生した。多くの人命が奪われるような大事故が生じれば、日米安保体制を揺るがしかねない。その意味でも、辺野古への移設が求められる。

 北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の強引な海洋進出などで、日本を取り巻く安保環境は厳しさを増している。沖縄は戦略的要衝であり、沖縄に駐留する米軍の存在は日本や地域の平和と安定のために極めて重要だ。

 特に、中国が一方的に領有権を主張している尖閣諸島は沖縄県の島である。尖閣周辺では中国公船が領海侵犯を繰り返しているほか、今年1月には尖閣付近の接続水域に中国のフリゲート艦と潜水艦が入るなど活動が活発化している。

 反対は中国を利する

 こうした事態を、翁長氏はどのように受け止めているのか。辺野古移設に反対することは、結果的に中国を利することになりかねない。