公文書書き換え、信頼損なう言語道断の行為だ
公文書は「国民共有の知的資源」であり、書き換えは行政への信頼を大きく損なう。言語道断の行為だ。
森友問題で財務省書き換え
書き換えが確認されたのは学園への「売払決議書」「貸付決議書」など計14件で、変更は計200カ所を超える。公文書は行政機関の意思決定過程を検証するために欠かせないものだ。その書き換えは民主主義の根幹を揺るがしかねず、到底許容できない。公文書管理法に抵触する恐れもある。
さらに、書き換えた公文書を国会議員らに提示したことは立法府軽視も甚だしいと言わざるを得ない。安倍晋三首相は「行政の長として責任を痛感している」として陳謝したが、こうした事態を招いたことを重く受け止める必要がある。
書き換えは本省の理財局の一部職員が関与し、森友側との交渉当事者だった近畿財務局で実際に行われたという。麻生太郎副総理兼財務相は、書き換えの最終責任者は当時財務省理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官だとの見解を示すとともに、佐川氏の国会答弁に合わせる形で書き換えられたとしている。
しかし、与野党はこの説明に納得していない。公文書からは、鴻池祥肇元防災担当相や平沼赳夫元経済産業相、鳩山邦夫元総務相の秘書が財務省などに問い合わせや働き掛けをしたとの記録や、学園側が安倍首相夫人の昭恵氏とのやりとりを持ち出した記述も消された。土地取引を「特例的」と表現した部分や、これまで政府が否定してきた価格交渉が行われていたことをうかがわせる「価格等について協議した」といった記述も削除されていた。
森友学園への国有地売却をめぐっては、鑑定価格の約9億5000万円から約8億円が値引きされた。政府は、政治家の働き掛けなどがなかったかどうか明確にすべきだ。
日本は北朝鮮の核・ミサイル開発や少子高齢化などの国難に直面している。憲法改正も待ったなしだ。本来であれば、こうした課題について国会で論議しなければならない。
だが、今回の公文書書き換えを受けて野党が審議を拒否し、国会が空転していることは極めて遺憾だ。政府は全容解明を急いで関係者を厳正に処罰するとともに、この問題について国会や国民に丁寧に説明することが求められる。
適切な管理に努めよ
政府の文書管理のずさんさは今回に限らない。防衛省では昨年、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊の日報に関して、存在しないとしていたデータが残っていたことが判明し、稲田朋美元防衛相らが辞任する事態に発展した。
財務省は契約に関する決裁文書の保存期間について、契約終了日の翌年度から5年間とする新たな規則を設けた。恣意(しい)的に公文書を扱っているとの疑念を招くことのないよう、財務省をはじめ各省庁は適切な管理に努める必要がある。