家庭教育支援法、子供たちに必要な法整備だ
家庭での子育てや教育を支援し、子供たちに豊かな未来を――。そんな趣旨で全国の自治体の中には、家庭教育支援条例を制定し、家庭教育、子育て支援策に取り組むところがある。
これは本来、国が責任を持って進めるべきものだ。それで自民党は「家庭教育支援法」の制定を目指しているが、国会は与野党対決の様相を強め、いまだ上程できずにいる。家庭教育の支援を党利党略で阻むべきではない。同法案を早急に上程し、今国会での成立を期すべきだ。
条例制定が全国的広がり
家庭は教育の原点であり、全ての教育の出発点だ。基本的な生活習慣、豊かな情操、他人に対する思いやりや善悪の判断などの倫理観、自立心、自制心は、愛情による絆で結ばれた家族との触れ合いを通じて家庭で育まれる。
そんな認識に立って熊本県では2013年に全国に先駆けて「くまもと家庭教育支援条例」を施行した。同条例は子供を地域の宝とし、家庭だけでなく、地域社会、県民みんなで子供の育ちを支えていくとしている。
学校や地域、事業者などの支援団体を「くまもと家庭教育支援チーム」として登録し、連携し合って家庭教育支援に当たっている。家庭教育講座を設け、これから親になる中高生や若者が乳幼児と触れ合う体験の場を提供しているほか、子育て電話相談や家庭での触れ合い時間を確保するための「ノー残業デー」設定などの取り組みを進めている。
こうした条例は熊本県のほか鹿児島県や岐阜県、石川県加賀市や長野県千曲市などでも制定され、全国的な広がりを見せている。都市化や核家族化などで親たちが身近な人から子育てを学ぶ機会が減っているからだ。
また地域では「子供の貧困」など困難を抱えた家庭の増加が指摘されるなど、家庭を取り巻く環境は悪化している。地域住民と力を合わせて家庭教育を支援するのは自治体として当然の責務だろう。
想起すべきは、家庭は人の命と心を育み「個の尊厳」の基礎となるということだ。世界人権宣言は「家庭は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有する」(16条3項)とうたっている。家庭教育への援助はその柱の一つだろう。
06年の改正教育基本法は家庭教育の条項を設け、「保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」とし、「生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努める」としている。
また、国と自治体は「家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずる」とうたっている。
国が責任を持つべきだ
家庭教育支援法案はその施策を明確にするものだ。一部メディアや野党は「改憲への布石」とか、家庭教育への「公」の介入などと批判しているが、的外れな見方だ。家庭教育支援を自治体任せにせず、国が責任を持って進める。そのために法案を早期に成立させるべきだ。