中国ドローン、領空侵犯への対策が急務だ
沖縄県石垣市の尖閣諸島沖で中国の小型無人機「ドローン」の飛行が初めて確認され、航空自衛隊のF15戦闘機が緊急発進(スクランブル)した。
ドローンが飛び立った中国海警局の船は日本の領海内にいたため、船から発艦した時点で領空侵犯したことになる。対策が急務だ。
尖閣沖で飛行を初確認
稲田朋美防衛相は、中国ドローンの領空侵犯について「事態をさらにエスカレートさせるもので全く受け入れられない」と表明。菅義偉官房長官も「中国による新たな形態の行動だ」と述べた。中国が尖閣奪取に向けた動きを強めているとみて警戒すべきだ。
一方、中国外務省の華春瑩・副報道局長は「中国海警局が飛ばしたものではなく、メディアが空中撮影で使用していた。軍事活動ではない」と主張しているが、到底信用することはできない。ドローンは戦闘機などと比べコストが低く、リスクも小さいとされ、自衛隊を常に緊張状態に追い込むにはうってつけと言える。
ドローンは数年前に世界に登場し、荷物の宅配や警備などに使われるなど急速な普及を遂げた。もっとも日本では2015年4月、首相官邸の屋上に落下しているのが発見され、テロへの悪用も懸念されている。
軍事用ドローンも、米軍がパキスタンなどで対テロ戦に利用したことで関心を集めた。日本周辺では、ロシアが北方領土にドローンを配備するとしており、これも許し難いことだ。
中国のミサイルメーカー、中国航天科工集団幹部は軍事用ドローンの世界トップ企業となることを目指し、ステルス性能を持つドローンの開発を進めているとされる。中国が今回、ドローンを飛行させた狙いは警戒監視や情報収集とみられている。小型化、高性能化が進めば、対応が難しくなる恐れがある。
中国は尖閣周辺で領海侵入を繰り返しているが、13年11月には尖閣上空を含む防空識別圏を設定。空自が行う緊急発進数は16年度、過去最多の1168回に上ったが、中国機への発進が前年度比プラス280回の851回と急増したことが要因だ。中国が日本の空への圧力を強めていることは看過できない。
懸念されるのは、中国が尖閣だけでなく沖縄全体の奪取を狙っているとみられることだ。13年5月8日付の中国共産党機関紙・人民日報は、論文「『馬関条約』と釣魚島問題を論ずる」の中で「歴史的な懸案で未解決の琉球問題を再び議論できる時が来た」と主張している。
政府は中国の海洋進出活発化を踏まえ、南西諸島の離島防衛に重点を置いている。与那国島(沖縄県)に約150人の沿岸監視部隊を配備したほか、18年度末までに宮古島(同県)に約800人、奄美大島(鹿児島県)に約550人の警備部隊・ミサイル部隊を配備する方針だ。
政府は実効支配強化を
これとともに、政府は尖閣の実効支配を強化しなければならない。公務員常駐などのほか、中国ドローンによる領空侵犯を防ぐためにもレーダーや対空防御施設を設置することを検討すべきだ。