英語学習、外部試験活用と授業力向上を
政府は中学3年で英検3級相当以上、高校3年で準2級相当以上の英語力を持つ生徒の割合を、2017年度までにそれぞれ50%にするという目標を立てている。だが、文部科学省が発表した16年度の「英語教育実施状況調査」の結果では、中学3年が36・1%(前年度比0・5ポイント減)、高校3年で36・4%(2・1ポイント増)であった。
受験料助成の自治体も
この結果を分析し、今後に生かす必要がある。文科省は「17年の目標到達には厳しい状況にあるが、全国でも良い取り組みをしている地域がある。それを参考に英語力の向上を図ってもらいたい」としている。「聞く」「話す」「読む」「書く」といった英語の4技能をバランスよく育成していきたい。
しかし、中学、高校と学年が上がるとともに「読む」「書く」を中心とした“受験制度のカベ”が立ちはだかる。小学生の頃に歌やゲームで英語の楽しさに触れた児童が、中学生になると筆記試験に追われ、英語嫌いになってしまうケースが多い。「外国の人と交流して世界に友達の輪を広げたい」「将来海外に出て行くために」など、児童・生徒にしっかりした動機付けをすることも必要だ。
文科省の学習到達目標は、中学ではコミュニケーション能力の習得、高校ではコミュニケーション能力を「的確に、適切に」使えるレベルとなっている。討論や議論、交渉をできるようにするのが文科省の狙いだ。だが、単語や文法が分かる、使えるだけではこの高い目標を達成できない。まずは国語など他教科で、討論や議論ができる教育をしていかなければならない。
今回の調査で高校3年の英語力が前回の全国41位から10位に大幅アップした神奈川県は、グローバル化に対応する人材の育成を目指し、昨年から希望した高校の生徒8000人を対象に民間英語試験の受験料の半額を助成している。県高校教育課は試験結果を精査して現場での授業に生かし、改善を試みている。
沖縄は高校3年の英検準2級相当以上が前年比10ポイント上がり、38・4%になった。前年度の準2級取得者の割合は悪くなかったが、県教育委員会は「話す」に着目して「読む」「聞く」「書く」とは別枠で授業に取り組むよう教師に促した。その結果、準2級相当以上と判断できる生徒が増えた。
教員の英語力も今回の調査で、英検準1級相当以上が中学50%、高校75%という政府目標に達した自治体は、中学が福井県のみ。高校も香川、福井、石川など12県のみにとどまった。
中学3年のトップに立った奈良県は、教員の研修を強化した。14年度から奈良教育大と連携して講座を開設。受講者の英検受験料を県が負担したことから、英検準1級相当以上の資格取得者が大幅に増加した。県教委は「教員の指導力向上が生徒の英語力アップにつながっている」としている。
できることをコツコツと
生徒の英語力アップには、民間の英語試験の受験機会を増やすことが近道だ。また、担当教員の研修は自治体および教員の負担増になる。できることをコツコツ積み重ねることが肝要だ。