同性カップル里親、子供の家庭観混乱させるな
大阪市が男性の同性カップルを子供の「養育里親」に認定した。全国で初めてのケースとみられる。
両親の代わりを同性カップルに担わせれば、子供の家庭観形成に混乱を来す恐れがある。厚生労働省はガイドラインを見直し、追随する自治体が出るのを防ぐべきである。
大阪市が全国初の認定
養育里親に認定されたのは40代と30代の男性カップル。今年2月から10代の男子を預かっている。この制度は、保護者がいなかったり、虐待などで保護者に養育させることが不適当と認められたりした18歳までを一定期間預かり養育する仕組み。厚労省のガイドラインに基づき、都道府県や政令市が認定する。
ガイドラインには同性カップルを里親から除外する規定はない。大阪市が男性同性カップルを認定した根拠の一つはここにあるようだ。しかし制度の趣旨を見れば、基本的に夫婦を前提としているのは明らかである。
子供は、大人との愛着関係を強める中で健全な成長を遂げることができる。それには、父親、母親それぞれの役割が重要であり、里親も夫婦そろった愛情ある家庭が望ましい。厚労省は同性カップルの里親認定について「聞いたことがない」としている。これまで認定がなかったのは、制度が同性カップルを想定していない証左である。
また、里親家庭で生活することについて、厚労省は「将来、家庭生活を築く上でのモデルとすることが期待できる」としているが、同性カップルと生活を共にすれば、家庭観形成など、子供の精神面に対する影響は避けられない。
一般家庭で育った子供と、同性カップル家庭で育った子供の比較研究は、米国ですでに行われている。カトリック大学のポール・サリンズ教授の研究によると、青年期にうつ症状のある割合は、同性カップル家庭の方が一般家庭よりわずかに低い。だが成人期では、一般家庭で青年期よりも減る半面、同性カップル家庭では大幅に増加し、半数がうつ症状を示したという。
米心理学会などは、一般家庭と同性カップル家庭の子供に「差異がない」と結論付けている。しかし、それは子供時代だけを見るからで、サリンズ教授は後者で育つことの影響のいくつかは、成人後に現れるとしている。子供の人生を考えると、最終的に認定した吉村洋文・大阪市長の責任は重大である。
住民のコンセンサスもなく、吉村市長が「行政の暴走」とも言える認定を行った背景には、自身が目指す社会像があるのだろう。市長は「(こうしたことが)ニュースにならないのが在るべき社会だ」と語っている。同性カップルがどんどん里親になる社会を理想としているようだが、家庭における夫婦の役割をどう考えているのか。
伝統的家族守る方策を
もし夫婦も同性カップルも同じだと言うならば、それは男女の性差を否定するジェンダーフリー思想である。現在、この思想をさらに過激にした「LGBT(性的少数者)運動」が広がっているが、政府は夫婦を核とした伝統的な家族を守るための方策を練るべきである。