G7外相会合、シリア問題で対露外交強化を
イタリアで開かれた先進7カ国(G7)外相会合が、シリア情勢などについて共同声明を発表して閉幕した。
声明では、シリアでの化学兵器使用に対する米国のミサイル攻撃に理解を示すとともに、ロシアには内戦終結に向けてアサド政権に影響力を行使するよう働き掛けた。化学兵器を使わせないために対露外交を強化すべきだ。
激しく対立する米露
共同声明は、シリアの北西部イドリブ県で起きた猛毒サリンによる民間人殺戮(さつりく)に対し、これをアサド政権の仕業と断定した米国がシリア空軍基地を攻撃したことについてどう合意形成するかが注目された。ロシアとイランに「シリアが化学兵器禁止条約の義務を順守するよう影響力を用いることを求める」ことは喫緊であり、アサド政権の擁護か断罪かで決裂するより、まずは化学兵器が使われないよう協力すべきだ。
国連安全保障理事会では、米露が対立している。両国の外相会談でも、アサド政権への支援見直しをロシアに迫るティラーソン米国務長官と米国の攻撃を「違法」と批判するロシアのラブロフ外相との溝は埋まらなかった。
しかし、シリア問題をめぐって米露をはじめ国際社会で対立が深まれば、漁夫の利を得るのは過激派組織「イスラム国」(IS)などテロを繰り返す残虐な武装集団だ。
3日にはロシア第2の都市サンクトペテルブルクで地下鉄爆破テロがあった。キルギス出身の自爆犯はシリアのイスラム過激派勢力と関係していたとみられ、ロシアがシリアで行っているIS掃討作戦などに対する報復という見方が浮かび上がっていた。
このテロをめぐってロシアのプーチン大統領とトランプ米大統領が電話会談し、IS掃討で結束を確認したばかりのところへ、シリアでの化学兵器攻撃が起き、一転して米露が激しく対立する事態になった。
国連安保理ではスウェーデンなど一部の国から、アサド政権による化学兵器使用の証拠が示されないままの米国の攻撃を諫(いさ)める発言もなされた。この点、共同声明が攻撃について「注意深く計算され、対象が限定された対応」と理解を示したことは、化学兵器の使用を抑止する必要から評価できる。
オバマ前米大統領は2013年のシリアでの化学兵器攻撃に「レッドラインを越えた」と言いながら軍事行動を躊躇(ちゅうちょ)し、「米国は世界の警察官ではない」と釈明した。その後、化学兵器問題で主導権を握ったのはプーチン大統領で、結果、シリア内戦はロシア・アサド政権側が優位に立った。今回トランプ大統領が軍事行動に踏み切らなければ、共同声明は力の裏付けを欠いた空文に等しいものとなっていたはずだ。
和平に向け協議進めよ
シリアは複雑な民族、部族、宗教問題を抱えており、一筋縄ではいかない。声明はロシアに「紛争を終結させるようシリア政権に対する影響力を用いることを促す」と訴えている。G7とロシアは和平に向け協議を進めるべきだ。