数学的な考え方を育てる教材研究と開発
横浜国大附属小で算数数学教育合同研究会開く
第35回算数数学教育合同研究会(向山宣義会長)がこのほど、「数学的な考え方を育てる教材の開発とその指導」と題し、横浜国立大学附属横浜小学校で教育関係者200人余りを集めて研究会を開いた。同研究会は「数学的な考え方」を育てる実践のため教員の指導力研鑽(けんさん)が重要として教材研究と教材開発を行っており、同日は公開授業のほか、「日常の事象を数理的に捉えたり、発展的統合的に考察する考えを育てる指導」と題した元横浜国立大学教授の片桐重男氏の講演も行われた。(太田和宏)
「サイコロのヒミツ」公開授業も
公開授業では、新2年生の算数「台形4枚(授業では新幹線形と言っている)を組み合わせてできる図形」について川崎市立野川小学校の向井たか子教諭が行った。二つを並べてハート形なども作り、その後、児童たちはさまざまな組み合わせ(回転させたり、裏返したり)で長方形(短冊を二つ並べた感じ)を作る。
児童たちはこれまで、図形の素地となる「かたちあそび」や「かたちづくり」の学習を行ってきている。身近な立体を使った、かたちあそびの活動を通して、立体の構成要素である面に着目する学習を行っている。
向井教諭が「切ったり、折り曲げたりしないで、真四角を作ることができるかな、どうしたらいいかな」と問い掛け、児童たちは試行錯誤を重ね「ずらしたらできる」ことに気付き発表した。入学して1年の児童たちが、活発に意見を出し合う、公開授業となった。
また、横浜国大附属小学校の堂越丈志教諭が、新中学1年生に対して算数「サイコロのヒミツ」と題して公開授業を行った。教師がサイコロを五つ、教卓の上に積み重ね、「回りから見たとき、見える面の目の和はいくつになるか」、と生徒に質問を投げ掛けた。児童たちはサイコロの表の目と裏の目を足すと7になることを知っている。その知識を使って試行錯誤する。
すぐに答えの分かる児童、なかなか、答えが出ない児童、さまざまだが、すぐに答えが出た児童には、他にもやり方があるか、考えさせ、どのように考えたか理解させることも行っていた。
サイコロをどんなふうに積み上げても、見える目の和の大きさに関係してくるのは一番上の面の目だけ。そのことの面白さに児童たちに気付いてもらうことがこの日の授業の目標だ。式化することでサイコロの数が10個のときも、100個になっても、すぐに分かるようになり、式化することの有用性をクラス全体で認識できた。
数学的な思考力について、片桐重男氏は「数学的な考え方は、それぞれの問題解決に必要な知識や技能に気付かせ、知識や技能を導き出す力である。さらにこのような知識や技能を駆り出す原動力であるとみるのがよい」と述べている。
問題解決における数学的な思考力の役割と重要性を示している。算数の問題解決的学習過程を考えてみると、初めに問題を把握し、問題解決への見通しを立て、問題解決をする。その時に使われた考え方を、論理的、形式的に明確化したり整理したりした後、さらに一般化したり、体系化したりする過程を取ることが一般的である。
このような学習過程を振り返ってみると、すべての過程において、数学的な見方や考え方が身に付いていなければ学習を進めていくことが難しいと分かる。そのため、それぞれの場面において、数学的な見方や考え方を活用しながら、さらに深めていくことが重要になってくる。
この日、片桐重男氏は「お菓子を違いが1ずつや、2ずつになるように分けるときの、人数と個数の関係」「Jリーグの年間成績表から見た数理化」などについて子供たちにどのように教え、考えさせるかについて語った。
見える目の合計を求めるやり方
1、4+6+5+1+2+…=74
(見える数を全部足し算する)
2、7×2×5+4=74
(見える数7×2で14、五つ、最後に上の4を足す)
3、7×3×5-(7×4+3)=74
(全部の目の数の合計から見えない目の合計を引く)
4、7×3×5-(7×5-4)=74
(全部の目の数の合計から見えない目の合計を引く。
考え方は同じだが、見えない部分の合計の計算が3、とは異なっている)