危険から子供を守るための連携を


 不登校で連絡が取れない状態が続いたり、不良グループなどと交際したりする中で、危険な目に遭う恐れのある子供が全国で400人に上るとの調査結果を文部科学省が公表した。

 学校は警察や児童相談所など関係機関と協力して子供を守らなければならない。

 川崎の事件受けて実施

 この調査は川崎市の男子中学生殺害事件を受けて行われた。文科省は①7日間以上不登校が続き、面談などで安全が確認できない②学校外のグループと付き合う中で危害を加えられる恐れがある――ケースについて報告を求めていた。

 調査結果によると、不登校で安否が確認できない子供は232人。保護者の協力が得られず面会や連絡ができないという事例が多かった。また、交友関係で危険に巻き込まれる恐れがあるのは168人。年上の兄弟や先輩などを通じて暴走族や非行グループに入ったケースが多く、仲間内のトラブルで暴行された生徒もいる。

 ただし子供に危険が及ぶ可能性についての判断は各教育委員会に委ねられ、最多の大阪府が65人である一方、12県は0人と回答した。この数字は氷山の一角とみていい。さらに調査を重ねるべきだ。

 今回の調査を受け、文科省は「早急に安全を確保する必要がある」として、警察や児相との連携体制をつくって対応するよう各学校に通知した。川崎市の事件では、学校だけで対処し、関係機関と協力できなかった問題点が指摘されている。悲惨な事件の教訓を生かし、子供を危険から守らなければならない。

 殺害された男子中学生は1月以降、不登校が続いていたため、担任教諭は母親に30回以上電話し、自宅も訪問した。だが結局、凶行を防ぐことはできなかった。男子中学生は事件前、暴行を受けて顔を腫らし友人に身の危険を訴えていたが、学校は把握できていなかった。

 子供の発信するSOSを見逃さないためには、本人に直接会うことが不可欠だ。ただ本人の素行不良やネグレクト(育児放棄)などがある場合、学校だけでは十分に対応できない。スマートフォンの普及もあって、子供の世界はますます見えづらくなっている。学校と警察、児相によるサポートチームの設置など、子供を守るための実効性ある仕組みが求められる。

 事件の再発防止に向けては、学校と関係機関の「橋渡し役」であるスクールソーシャルワーカー(SSW)の活用も重要となる。川崎の事件では要請がなく派遣されなかったが、SSWが関与していれば別の対応を取れた可能性があった。

 SSWは教委が委託した社会福祉士など、全国で約1500人が活動する。SSWがそれぞれのケースに応じ、スクールカウンセラーらに割り振ることで被害防止につなげていく必要がある。

 体制強化が欠かせない

 ただし、SSWの2013年度の配置率は市町村教委で約37%、都道府県教委で27%にとどまる。

 不在地域や1人が20人以上の子供を担当するケースもあり、体制強化が欠かせない。

(3月16日付社説)