教委改革、首長権限強化する抜本改革を
教育委員会制度の見直し案作りが大詰めを迎えている。自民党が教育委員長と教育長を統合して新「教育長」を置くなど首長の関与を拡大する見直し案をまとめた。公明党と協議を進め、近く与党案を作成する。教育再生に向けて安易に妥協せず、抜本改革案を作成すべきだ。
事務局に教組の影響も
なぜ教委の改革が必要なのか、そのことを見せ付けたのが、2011年に大津市で起こったいじめ自殺事件だろう。市教委は当初、いじめを原因とせず、また「教育的配慮」を理由に調査を怠ったりするなど「無責任体質」をさらけ出した。このため市長が第三者機関を設けて検証し、警察も市教委と学校を強制捜査する事態に発展した。
現行制度では、地方教育行政で執行権を持つのは教委だ。教委は戦後の占領下に設置され、教育行政に民意を反映するレイマン・コントロール(素人による支配)が導入された。
当初、教育委員は公選制だったが、教職員組合が組織動員して選挙運動を繰り広げるなど党派的対立が持ち込まれ、教育が荒廃した。それで主権回復後の1956年に任命制に改められた。しかし、レイマン・コントロールの形態は残され、「治外法権」化してきた。
委員は原則5人それも非常勤で、専門知識や情報量も少なく、教委事務局の言いなりになりがちだ。それで責任の所在が不明確となり、大津市での失態にもつながった。
実質的な教育行政は教育長がトップの教委事務局が握っている。事務局では教員が出向して職員となることが多く、教組の意向を受けて動いたり、身内をかばう閉鎖性に陥ったりする。表向きは「教育の中立性」と言っても、裏では左翼教組が学校の「不当な支配」を続けるケースもある。
これに対して大阪では橋下徹市長が主導し12年に教育行政基本条例が策定された。同条例では首長が教育振興基本計画を教委と協議して作成するなど首長権限を強化している。
では、自民党案はどうか。教育行政の執行権は従来通り教委が持つが、教育長と教育委員長を統合し、首長が任命・罷免する新「教育長」を責任者と位置付けている。また教育委員や有識者で組織する首長主宰の「総合教育施策会議」を設け、方針決定への協議や調整を行うなどとしている。
昨年末に中央教育審議会は首長権限を強め、教委を諮問機関とするA案と、教委を充実させ教育長をその補助機関とするB案を提示したが、自民党案はA案に近い。B案では無責任体質を改善できないとされていたから、その意味では評価される。だが、自民党案では教委が残ることになり、どこまで教育行政の責任体制が構築できるのか、不透明だ。
与党は制度廃止も念頭に
これまで教育関係者からは、教委制度を廃止し、首長部局の一つとして責任を明確化させて教育行政を透明化し、教委に代わって民意を反映する諮問機関を創設し教育の再生を図る―といった改革案が出されている。与党案はこうした抜本改革案にできる限り近づけるべきだ。
(2月26日付社説)