ソチ五輪閉幕、「克己」示した選手に感謝


 ロシアのソチで開かれていた「冬の祭典」が幕を下ろした。17日間にわたって熱戦を繰り広げた世界88カ国・地域のすべての選手たち、中でも国外大会としては史上最多の8個のメダルを獲得し、4年後に韓国・平昌で開かれる冬季五輪、そして2020年の東京五輪に弾みを付けた日本選手団の健闘に拍手を送りたい。

日本を勇気づけた活躍

 今大会ではテロによる不測の事態の発生が懸念されたが、大きな混乱なく無事に終了した。その上に、開催国ロシアが最多の金メダルを獲得して国民を沸かせた。この意味では、ソチ大会は成功したと言っていい。

 これは東京五輪の成功も日本選手団の成績によって大きく左右されることを示している。6年後の夏季大会で「チームジャパン」は金メダル20~30個、世界の「トップ3」に入ることを目標に掲げている。

 しかし、ライバル国は我々の予想を超えて選手の強化に力を入れており、前記の目標達成は容易ではない。緻密な強化計画とそれを実施に移せる十分な政府の支援体制が必要である。

 チームジャパンでは、フィギュアスケート男子の羽生結弦選手が金メダルを獲得して多くの日本人を勇気づけた。東日本大震災で被災した羽生選手の活躍は、被災地の人たちに大きな励ましとなったに違いない。

 また、ノルディックスキー・ジャンプの男子団体ラージヒルでは、7度目の五輪出場で個人では銀メダルを取った41歳の葛西紀明選手がリーダーシップを発揮し、ケガや難病を抱えた後輩たちとチームジャパンならではの「絆」を紡いで銅メダルを獲得した。その輝きは金メダルに引けを取らなかった。

 一方、メダルを逃した選手たちも感動のドラマを見せてくれた。フィギュアスケート女子の浅田真央選手は、緊張からかショートプログラムでつまずいてまさかの16位と出遅れながらも、フリーでは自己ベストとなる渾身(こんしん)の演技を披露し、ファンの涙を誘った。

 さらにメダルには届かなかったが、過去最高の5位となったカーリング女子のチームワークは見事だった。特に、前回銅メダルの中国を破った健闘が光った。チームには、結婚・出産を経て出場した小笠原歩選手と船山弓枝選手がいる。母親でも、世界のトップ選手になれることを実証した。

 感動を生む選手たちに共通しているのは自己に打ち克って競技に臨んだ点だろう。五輪というと、日本では「近代五輪の父」として知られるクーベルタンの「参加することに意義がある」という言葉を思い出す人が多い。しかし、これは彼が引用で語ったもので、彼自身の言葉としては「自己を知る、自己を律する、自己に打ち克つ、これこそがアスリートの義務であり、最も大切なことである」がある。

平昌でも実績と感動を

 世界一流のアスリートによる熱戦が多くの感動を呼ぶのは、その背後に克己の心があるからだ。大舞台で実力を発揮できる精神を鍛えることも、選手強化の重要なポイントである。

 平昌では、今回以上の実績と感動のドラマを期待したい。

(2月25日付社説)