わいせつ教員 厳罰と共に被害者ケアも重要
教員による児童生徒へのわいせつ行為を防止する「教員による児童生徒性暴力防止法」(わいせつ教員対策新法)の法案が衆院文部科学委員会で審議され、衆院に提出されることが全会一致で決まった。超党派の議員立法として提出された法案の成立に向け大きく前進した。
計り知れない心の傷
子供の成長と学力向上を願う保護者や地域社会の信頼を裏切る教員のわいせつ行為は断じて許されるものではない。信頼を寄せていた教師の行為によって、被害者となった児童生徒が受けた心の傷、精神的苦痛は計り知れないものがある。将来の夢が断たれたり、教員を含めた大人を信頼できなくなったりするなど、精神的な傷の大きさは想像を超える。厳しい処罰が加えられるのも当然であろう。
現行の教員免許法では、懲戒免職になって免許を失効しても、3年たてば再取得が可能となる。また、学習塾やスポーツ施設などで指導者として勤務しながら、わいせつ行為を再犯するケースも少なくないという。この種の犯罪は再犯する可能性が極めて高い。
文部科学省によると、2019年度にわいせつ・セクハラ行為で処分された公立の小中高校教員は過去2番目に多い273人だった。15~19年度には1000人を超えている。このうち半数が「指導」や「面談」と称して自ら勤務する学校の児童生徒や卒業生を対象にしていたというから質(たち)が悪い。
「恥ずかしい」「恐ろしい」と被害を訴え出られない子供の心を踏み躙(にじ)ることは許されない。トラウマになって幸せな結婚ができないなど、成長してから苦しむケースも多くあるという。また「優秀な先生だから、処分されては困る」と、被害者やその保護者が学校側や周囲の保護者から口止めされるケースもあり、表に出る数は氷山の一角のようだ。
不適格な教員を排除するため、文科省は再度教壇に立つことができない「永久追放」を模索していたが、禁錮以上の刑は10年で消滅するとした刑法との整合が取れず、断念した経緯がある。今回の議員立法は免許の再交付について、都道府県教育委員会が第三者委員会から意見を聞いた上で、交付を拒否することも可能な裁量権を持たせることが最大の特徴だ。
与党ワーキングチームによると「加害行為の重大性、更生の度合い、被害者や関係者の心情などを総合的に判断し、再交付の可否を決める」としている。処分後に免許を再申請する自治体と以前処分された自治体の教委が情報を共有できるシステムをつくっている。
カウンセラーの充実を
わいせつ教員を厳しく処罰することはもちろんだが、被害者の精神的ケアも不可欠だ。業務の多忙さに加え、同僚との付き合い、保護者からのクレームなど目に見えないストレスが圧(お)し掛かって、年間6000人が休職に追い込まれているのが教員の現状だ。子供の学力と人間性を育む教員の本分に集中できるよう、被害を受けた児童生徒の精神的ケアを担当するスクールカウンセラーを充実させ、十分な措置を講じてもらいたい。