わいせつ教員、免許再取得禁じる法改正を


 文部科学省は、児童生徒へのわいせつ行為で失効した教員免許の再取得を厳しくする改正法案の国会提出を見送った。

 内閣法制局が法制上のバランスが取れないとの見解を示したためだ。だが、被害を受けた児童生徒は心に深い傷を残す。免許再取得を禁じる法改正を行うべきだ。

 被害生徒が自殺の事例も

 文科省によると、わいせつ行為やセクハラで2019年度に懲戒処分を受けた公立の小中高校などの教員は273人で、過去2番目に多かった。児童生徒に対するわいせつ行為が理由だった教員は126人と4割を超え、うち5人が停職、他は懲戒免職とされた。

 文科省は、児童生徒へのわいせつ行為は原則として懲戒免職とするよう各教育委員会に指導し、昨年9月までにこうした処分基準が全国で徹底されたという。これ自体は評価できる。

 問題は、教育職員免許法で懲戒免職によって免許が失効しても最短3年で再取得できるようになっていることだ。わいせつ教員が処分歴を隠して別の教委に採用されるのを防ぐため、文科省は再取得が可能となるまでの期間を無期限に延長することを検討していた。

 しかし、内閣法制局が法制上のバランスが取れないと判断した。教育職員免許法では禁錮以上の刑を受けた場合でも、執行から10年たてば再取得が可能となっているが、これは刑法の規定に準じたものだ。このため、文科省は今国会への改正法案提出を断念した。

 だが、児童生徒に対する卑劣な行為を防ぐことが最優先のはずである。わいせつ行為で免許が失効した教員は、二度と取得できないようにすべきだ。

 札幌市教委は20年以上前に生徒にわいせつな行為をしたとして男性教諭を懲戒免職とした。市内の中学校に通っていた40代女性は、男性教諭から性被害を受け、その後心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症。損害賠償を求めた訴訟で教諭の性的行為が認定され、今回の懲戒免職につながった。

 この事例を見ても、被害を受けた児童生徒の心の傷の深さは計り知れない。沖縄県では、中学校で男性教員からわいせつ行為を受けた女子生徒が、その1年後に自殺したケースも生じている。実効性ある対策を講じることが急務である。

 わいせつ教員の免許再取得の可否をめぐっては、憲法で定められた「職業選択の自由」との整合性も議論された。しかし、教員からわいせつ行為を受けた児童生徒の保護者らで構成する団体のメンバーの一人は「教員免許が再交付されないとしても、教師以外の職業は制限されていない」と述べ、わいせつ教員の免許再取得禁止を求めた。もっともな指摘である。

 SNSの危険性啓発を

 教員の児童生徒に対するわいせつ行為が後を絶たないことについて、文科省はSNSでの私的なやりとりを禁じるなど、予防的な取り組みを進めたいとしている。

 教員に限らず、SNSで知り合った相手から性被害を受けるケースは多い。SNSの危険性について啓発を強化すべきだ。