ネットと子供、知らない人と連絡取らせるな
大阪市住吉区の小学6年の女児が誘拐された事件では、インターネット交流サイト(SNS)の危険性が改めて浮き彫りとなった。
SNSを通じて女児誘拐
未成年者誘拐罪で起訴された35歳の男は、警察の調べに対し、女児とはSNSを通じて知り合ったと供述している。
女児とのやりとりには、ツイッターの利用者同士が非公開で会話できる「ダイレクトメッセージ」という機能を使った。女児は「(男から)いきなりメッセージが来た」と説明。実際に会うまで、ツイッター上だけで交流していた。
男は女児を住吉区内の公園に誘い出し、在来線などを乗り継いで栃木県小山市内の自宅に連れ去った。逃げられないようスマートフォンや靴を没収し、偽物の銃弾を示し怖がらせるなど監禁状態に置いた。
「相談に乗り助けようと思っただけ」などと述べているが、到底納得できるものではない。裁判では詳しい動機の解明が求められる。
SNSを通じて子供らが被害に遭う事件は相次いでいる。2017年には、神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった。強盗殺人などの罪で起訴された住人の男は、ツイッターに自殺関連の投稿をした被害者を自宅に誘い出していた。9人のうち3人は15~17歳の女子高校生だった。
19年1月には、東京都葛飾区に住む当時18歳の女子大学生の遺体が、茨城県内で見つかった。女子大学生は、殺人罪などで起訴された30代の男とネットの掲示板で知り合い、事件に巻き込まれていた。
警察庁によると、昨年SNSを通じて犯罪に巻き込まれた18歳未満は1811人に上る。中でも性犯罪が多く、児童買春・児童ポルノ禁止法違反が最多の944人。殺人や強制性交、略取誘拐などの重大犯罪は前年比30人増の91人だった。
小学生の被害も増加傾向にあり、昨年は前年比14人増の55人だった。被害増加の背景には、ネットにアクセスしやすいスマホの普及がある。一方、被害者の中で有害サイトの閲覧を制限するフィルタリングの利用の有無が確認できた1559人のうち、被害時に利用していたのは187人。前年よりも57人増えたが、利用率は依然12%にとどまっている。
内閣府の調査では、スマホでネットを利用している子供の保護者で、フィルタリングを使っていると回答したのは36・8%。このうち小学生の保護者では22・5%にとどまった。また、子供のネット利用状況を把握しているとの回答は36・2%。子供や保護者の危機意識の低さが、犯罪を助長している面があることは否めない。
ルールを順守させよ
SNSを通じての犯罪では、子供を安心させるために同世代の女性に成りすますケースもある。こうしたネットの危険性を家庭や学校で子供にしっかりと伝えるべきだ。
特に家庭では「SNSで知らない人と連絡を取らない」「ネットでつながった人と会わない」などのルールを作って子供に順守させる必要がある。