読解力低下、本や新聞熟読して能力向上を
「日本『読解力』急落15位」(読売)、「『読解力』続落、日本15位」(朝日)など教育関係者にはショッキングな見出しが躍った。経済協力開発機構(OECD)が79カ国・地域で15歳計60万人を対象に2018年に実施した「国際学習到達度調査(PISA)」の結果を公表したという新聞記事の見出しだ。
国際調査で15位に急落
読解力低下は、03年に“PISAショック”として教育界を震撼(しんかん)させ、学習に対する自立性を養う「ゆとり教育」から「脱ゆとり」に大きく舵(かじ)を切る結果になったのと同程度のショックをもたらすものだ。
今回の読解力の結果は前回より12点低い504点。6段階ある成績で最も低い層(408点未満)の割合が約17%と4ポイント増え、8位から15位に下がる要因となった。読解力低下は、科学的応用力の得点が529点で2位から5位、数学的応用力が527点で5位から6位に下がった遠因とも言われる。
文部科学省は「スマートフォンやパソコン、タブレットなどを使ったSNSなどによる短文のやりとりの増加で読書などの長文に触れる機会が減った」ことを要因の一つに挙げた。ゲームやチャットでIT機器に触れる機会が増えても、学内の無線LAN整備率は4割程度。来年度の1人1台パソコンを持てる環境づくりに予算を割いているが、小中学校でのパソコンの台数は5~6人に1台というのが現状だ。ICT(情報通信技術)への対応はOECD加盟国中最低レベルで遅れは否めない。
15年からコンピューター画面上での出題・解答方式になり、読解力ではウェブサイトや投稿などインターネット上の複数の情報から信憑(しんぴょう)性の高いものを選別し評価する内容も加えられている。ネットでは、確認されないまま流出するデータが多い。信憑性を判断する力は、何人ものチェックを通して発行している新聞を読むことで養われる。
だが、低下の理由はそれだけとは言えない。親世代がスマホやパソコンの世界に嵌(は)まり、本や新聞を読まなくなっている。子育て中の親がネット配信の番組やテレビの“教育番組”に任せ切りという現状もある。全国大学生活協同組合による16年調査で、大学生の半数が読書時間ゼロ(専門書・教科書以外)という結果も出ている。
読書の良い点は、知識が増えるだけでなく、思考力が向上し、精神的な安定を得られることだ。また、他人が会得した知識や心境の世界も疑似体験として自分のものにできる。新聞や雑誌、小説、伝記、ルポルタージュなど活字に触れている生徒の読解力の点数は高かった。文章を的確に把握する力を身に付けることに近道はない。
しっかりした判断基準を
文科省、教育委員会、学校現場は結果に一喜一憂せず、幼少期から絵本を読み聞かせし、小中学校では本や新聞を読ませ、物事の判断基準がしっかりした児童・生徒を育む必要がある。来年度から順次、完全実施される学習指導要領にきちんと取り組むことも求められる。「主体的・対話的で深い学び」「ICT対応授業」などを着実に進めていくことが大切だ。