習近平「総書記」、呼称変更の提言は理解できる
ポンぺオ米国務長官は10月、保守系シンクタンク、ハドソン研究所での演説で、中国の習近平国家主席の呼称を共産党の役職である総書記とした。
ポンペオ氏も演説で使用
米政府高官が習氏を国家主席の呼称で呼ばなかったのはこれが初めて。米情報筋は政権内で、国民の意思を無視し、民主的な手続きを経ていない指導者として習氏を描く動きが強まっていると指摘する。もっとも、トランプ米大統領は11月、記者団に中国との貿易交渉について聞かれた際に「習国家主席」と呼んだ。政権内が一致しているわけではない。
米議会の米中経済安全保障問題検討委員会(USCC)は、11月に公表した年次報告書で、習氏を国家主席と呼ぶことはやめるべきだと提言した。国家主席の呼称は民主的な選挙によって選ばれたことを暗示して誤解を招くものであり、共産党の役職である総書記の方が実際の役割をより正確に表しているというのだ。確かに、うなずける指摘である。
ポンペオ氏が総書記に呼称を変えたのは、米政府が中国国民を敵視していないというメッセージを送ることで中国共産党政権と国民との間にくさびを打つ狙いもあるようだ。これに対し、中国の崔天凱駐米大使は「党と国民を分断することは、中国国民全体に対する挑発だ」と強く反発した。
中国共産党は10月末に開いた第19期中央委員会第4回総会(4中総会)で、自らの統治が経済発展と社会の安定を実現したとして「大きな優越性がある」と自賛した。しかし、新疆ウイグル自治区で100万人のウイグル族が収容所に送られている問題は国際社会から激しい批判を浴びている。このほか、民主活動家への監視や弾圧も強まっている。こうした現状を踏まえ、ポンペオ氏が中国共産党政権と国民を分けて捉えることは理解できる。
ポンペオ氏は講演で、中国共産党について「マルクス・レーニン主義の政党で、闘争と世界制覇に照準を置いている」と述べた。中国共産党政権は建国以来、新疆やチベットに侵攻し、インドや旧ソ連、ベトナムなど周辺諸国との戦争を繰り返した。現在は、東・南シナ海やインド洋で覇権主義的な動きを強めている。ポンペオ氏が警戒するのは当然だろう。
中国国家主席の任期は2期までとされていたが、2018年にこの規定は撤廃された。13年に就任した習氏の国家主席としての任期は無制限となり、習氏への権力集中が進んでいる。
一方、米国は知的財産権侵害を理由に中国からの輸入品に制裁関税を発動しているほか、香港の自治と人権を守るための「香港人権・民主主義法」を成立させた。国際ルールや人権などの普遍的価値観に基づく政策は、中国の共産党一党独裁体制に大きな打撃となろう。
共産党の本性見据えよ
日本は現在、中国との関係改善を進め、来年春には習氏を国賓として迎える予定だ。
だが、ポンペオ氏が指摘した中国共産党の本性を見据えて対応していく必要があるのではないか。