行使できない権利

 日本政府の外交・安全保障政策の司令塔となる「国家安全保障会議(日本版NSC)」が、昨年12月4日に発足し、首相、官房長官、外相、防衛相からなる「4大臣会合」が始動した。

 あわせて特定秘密保護法も成立。同法は、日本版NSCの発足に伴い、諸外国の情報機関と情報を共有するための機密保全の強化を目指すものであり、日本版NSCの運用には絶対に欠かせないものだ。

 日本版NSCの発足と特定秘密保護法の成立は、日本が普通の国になるための動きであり、歓迎されるべきものである。

 しかし、特定秘密保護法に関しては、朝日、毎日、東京の各紙は、日本が普通の国になるのがお嫌いのようで、紙面上で成立反対のキャンペーンを繰り広げた。

 同法成立後も批判を続けている朝日などは、「反安倍」そのものである。

 安倍首相は、特定秘密保護法の成立を受け、国民に向けた記者会見を行った。

 国家戦略として正しい選択をしようとすれば、リーダーは国民やマスコミから悪魔、独裁者呼ばわりされようが、それを実行するだけの決断力が備わっていなければならない。まさに安倍首相のブレナイ態度が、同法の成立に繋(つな)がったのである。

 今年はいよいよ、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更が政治日程に上がってくる。特定秘密保護法に反対した3紙は、従来からの論調(社論)を考えれば、絶対に集団的自衛権行使に向けた解釈変更にも反対してくるに違いない。

 現在の日本政府は、集団的自衛権に関しては「保有しているが、行使できない」としている。

 この解釈を表現の自由に適用すれば「表現の自由は保有しているが、それを行使することができない」となる。

 表現の自由が禁止されるようなことになれば、間違いなく3紙は反対するだろう。

 3紙は、現在の日本政府の集団的自衛権にかかわる憲法解釈にも、疑義を示すべきではないのか。

 それがマスコミとしての見識だと私は思うのだが。

(濱口和久)