新NPR、核戦力を強化へ

オバマ政権の核政策を非難

ビル・ガーツ

 最新の米中長期核戦略「核態勢の見直し」(NPR)の草案がリークされ、トランプ大統領が、新たな兵器を開発し、古い兵器と運搬手段を近代化して、核戦力を強化しようとしていることが明らかになった。
 草案によると、オバマ前大統領は核戦力を削減し、戦略兵器への依存を減らすという政策を取ったものの、ロシア、中国、北朝鮮の核削減にはつながらなかった。それどころか、これらの国々は核戦力の増強に意欲的に取り組んでおり、核のバランスを崩し、核戦争を阻止するための米国の戦略を覆す可能性がある。

 オバマ氏は2009年にプラハで行った重要演説で米国の核政策を発表し、「核兵器のない世界」を目指すと訴えた。

 オバマ政権下で10年に発表された前回NPRは、ロシアの核戦力の脅威は劇的に減少したため、米国も、10年のロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)で規定された以下の水準にまで核兵器を削減できるとしていたが、これは間違っていた。新STARTは、配備された米露の核弾頭を今年2月までに1550発に削減することを求めている。

 しかし、プーチン政権下のロシアは削減するどころか、新型ミサイル、発射台、潜水艦、爆撃機など核戦力の大規模増強に取り掛かっている。その上、紛争での核兵器の使用に重点を置いた軍事ドクトリンを採用した。

 オバマ氏の反核政策によって、核戦争の危険性はかえって高まった。同時に、米国の核戦力と、核を維持するためのインフラは20年間で大幅に弱められた。

 今回のNPRは、世界の核兵器を削減するための環境を整えるとしたオバマ政権の計画について「米国の戦略的競合国が米国に続くことはなく、世界はいっそう危険になった」と、計画の失敗を指摘している。

 ロシアは当初、新STARTの下で核戦力を削減したが、大量の戦術核を維持している。現在は、大量の小型核兵器を製造している。精密誘導ミサイルと併せて使用すれば、大型の戦略核と同程度の威力を持つ。

 中国も核戦力を強化、米国との戦略兵器交渉は拒否している。

 NPR草案は「中国はロシアと同様、国家安全保障の目的達成のためにまったく新しい核戦力を追求している。同時に通常戦力の近代化を進め、従来の西太平洋での米軍の優位に対抗しようとしている」としている。

 核の挑発を続ける北朝鮮についても同様のことがいえる。

 草案は、オバマ政権の核政策は稚拙だったと間接的に非難、「現実を見るべきだ。世界がどうあってほしいかではなく、世界の現状を見なければならない。今回のNPRで米国は、現在直面している脅威と、将来の不透明な安全保障環境を現実的に評価し、核政策を再編成する」と前政権から大きくかじを切ることを明確にしている。

 トランプ政権での核政策の最も重要な変更は、ロシアの小型核に対抗するために、精密誘導ミサイルなどの運版手段と併せて使用できる新型の小型核兵器の開発を勧告している点だ。