米戦略軍司令官、核戦力近代化の遅れを懸念

 核を搭載したミサイル、潜水艦、爆撃機を管理する米戦略軍のハイテン司令官は記者(ビル・ガーツ)との単独インタビューで、高まる中国、ロシア、北朝鮮の脅威を前に、老朽化した兵器の近代化が進んでいないことに懸念を表明した。また、情報操作、サイバー空間、宇宙などでの情報戦が戦略の重要な部分になりつつあると指摘した。

 ハイテン氏は「情報戦は将来、軍事的な優勢と支配を獲得するために欠かせないものとなる。…情報の生かし方を知っている軍が世界で最も強い軍になる」と、情報の重要性を強調した。

 ロシアと中国はすでに、戦略目的達成のために政治的・法的手段、メディア、情報、心理、サイバーという手段を使った強力な情報戦能力を獲得している。中国は南シナ海、東シナ海での支配確立に情報戦を活用。ロシアはハイブリッド戦とも呼ばれる情報戦で、ウクライナのクリミア半島の併合を成功させた。

 それに対し、米国は軍と民間双方で情報戦能力の開発を始めたばかりだ。

 陸軍大学は、武力攻撃に至らない「グレーゾーン」事態に関する報告で、敵国が感化、脅迫、強制、攻撃という手段で米国の利益を害している一方で、「これまでのところ米国はそれに対抗する一貫性のある取り組みをしていない」と指摘した。

 老朽化する核戦力と設備の近代化に関してハイテン氏は、現在の米軍の核兵器・戦力で十分な抑止力になっていると指摘する一方で、核弾頭などの全システムは直ちに近代化する必要があると主張、「最大の懸念はその速度だ」と、早急に近代化に取り組む必要性を訴えた。

 戦略核戦力のトライアド(三本柱)である大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機の近代化には12年から18年がかかるが、ハイテン氏によると、ロシア、中国、北朝鮮は、核戦力の近代化を米国よりも早く進めているという。

 ロシアは新型の多弾頭ミサイル、ミサイル潜水艦、爆撃機を急速に増強するなど核戦力の近代化を進め、2020年までに兵器の70%を更新すると発表している。ハイテン氏はこの点について「実際にそうなるかどうかは分からないが、一つ言えることは、2020年の米軍の近代化は0%ということだ」と危機感をにじませた。

 ハイテン氏によると「ロシアは急速に近代化を進めている。北朝鮮はさらに早い。中国は核戦力だけでなく、宇宙戦能力、近代的なサイバー戦能力の獲得を意欲的に進めるなど、さまざまな分野で急速に近代化を進めている」という。

 在韓米軍のブルックス司令官は、北朝鮮による2度目のICBM発射実験は、情勢を一変させる「ゲームチェンジャー」だと指摘。「脅威はすぐそこにある。だからこそ、戦略軍が必要であり、トライアドや核兵器、指揮統制、宇宙、サイバーの近代化が重要となる」と、戦略軍強化の重要性を訴えた。