判事指名めぐる戦い、ゴーサッチ氏の指名承認へ
共和党は議事妨害を阻止
あいまいな物言い、隠蔽(いんぺい)、露骨なごまかし、最高裁判事指名承認、議事進行妨害をめぐる共和党内のどたばたほど面白いものはない。議事進行妨害に反対であれ、支持であれ、これは、両党ともすでによく分かっていることだ。両党はこの問題について、熱意と確信をもって議論するが、候補者のイデオロギーによって、どちらを支持するかを臆面もなく変えてきた。
誰もが確かな信念を持ち、これが生々しい現実をめぐる戦いであることも分かっている。民主党のハリー・リード氏は2013年、同党が上院を支配し、オバマ氏が大統領だった時、最高裁判事指名承認をめぐる議事進行妨害をできなくした。3人のリベラル派判事をワシントンの巡回控訴裁判所に送り込むためだ。
◇民主の悪しき前例
当時、罰が当たる、悪(あ)しき前例になると警告を受けた。共和党が支配するときはいつか来るからだ。その日はすでに来て、共和党は、リードが作った規則を最高裁にまで拡大し、ニール・ゴーサッチ氏承認への民主党の議事進行妨害を阻止した。
確かに、議事進行妨害をめぐる両党の議論は筋が通っている。圧倒的多数が必要なら、譲歩が求められ、協力体制を築かなければならなくなるのは確かだ。ところが、40年前のリベラルな共和党員と保守的な民主党員は姿を消し、現在のような強固な分断状態の下では、圧倒的多数が必要となると何も動かなくなる。それによって、現在の国民の間の政治嫌い、特に議会への反感がいっそう強まる。私の考えでは、過度に使われてきた議事進行妨害を抑制する効果がある。これはいいことだ。
その上、最高裁判事指名の議事進行妨害を阻止すること、つまりいわゆるニュークリア・オプションで、二ついいことがある。優秀で若い保守派弁護士をアントニン・スカリア氏が座っていたポストに就かせられることと、リード氏と以前多数派だった民主党の無謀で尊大なやり方に相応の報いを受けさせられることだ。
最高裁判事の指名をめぐる戦いがこれほど激しく、見苦しくなったのは主に、その見返りが大きいためだ。政治的見返りだ。最高裁は議会をはるかにしのぐ力を持つようになった。中絶から同性婚まで、あらゆることで最終判断を下してきた。最高裁の支配が強まり、選挙で選出された機関を通じて表現された民主主義への当たり前の欲求は、抑制された。
中絶をめぐって、ほぼ半世紀にわたって大規模な街頭デモが行われてきたのはなぜか。投票しても無駄だったからだ。裁判所が判断を示し、問題は解決されたことになる。
この立法権の移転は、米国のリベラリズムとは相性がいい。ギャラップ調査によると、人口の20%から25%の支持を集めれば、選挙で選出された部門の支配権はすぐに移ることが分かっている。2009年から10年がそうだった。政界の秩序を望ましい方向に向かわせるには、どうすればいいか。裁判所を抑えるしかない。
◇リベラル派の大敗
この関係は、銀行と銀行強盗のウィリー・サットンの関係と同じだ。それこそが、適切な政治的結末を求めて向かうべき場所だ。ゴーサッチ氏の聴聞会での議論はすべて、事実上の政治判断に関するものだったことを思い出してほしい。中絶についてはどう考えているか。同性婚についてはどうか。民主党は、これは基本的原則の問題だというふりをした。つまり、前例の尊重だ。しかし、その前例が意図的に選択されたものであることは誰もが知っている。ロー対ウェイド、最近の例でいうとオーバーグフェル対ホッジスだ。
リベラリズムは、裁判所が政治的目的達成のための最後の頼みの綱になっていることを認めようとしない。そのためリベラル派は、巨大な思想的上部構造を作り出し、自由奔放なやり方、つまり自由な憲法解釈を正当化した。「生きた憲法」の守護者を自任している。そこでは、裁判所の役割は、変遷する社会的規範を反映することにある。裁判所は、国民の実情を正確に把握し、現代の文化を憲法に取り入れるようになる。
しかし、これは無意味だ。民主主義社会で、裁判所が、変化する規範を、選挙で選出された機関よりもうまく具現するということがあるのだろうか。どのような理屈で、数多くの変化に富んだ人々の規範を、たった三つのロースクールで誕生した9人の法律家が反映させられるというのか。
それどころか、憲法裁判所の目的は、230年にわたって活力と自由の両方を維持してきた古い規範を維持することにある。それを、強固な信頼の枠組みを築くことで行ってきた。
ゴーサッチ氏の指名承認は、裁判所を使って法と社会を徐々に左傾化させてきたリベラル派にとっては大変な敗北だ。しかし、ゴーサッチ氏承認によって、裁判所の思想的バランスを維持することができる。もうすぐ指名承認が行われる。議事進行妨害を不当に放棄した民主党は、判事指名で敗北することになる。
(チャールズ・クラウトハマー、4月7日)






