後方装備にも関心を
防衛省は2017年度予算の概算要求で、防衛費を前年度当初よりも増やし、5兆168億円を計上する方針だ。今年度予算より2・3%増の予算要求額となっている。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)など離島防衛を念頭に、2035年度配備を目指した新型地対艦ミサイルの研究開発費や、ミサイル防衛を強化するとして1050億円がパトリオットミサイル取得費などに充てられる。
第2次安倍政権が発足し、2013年度に11年ぶりに防衛費が増額されると、毎年増え続け、正面装備の充実が図られてきた。
防衛費の増額は、北朝鮮の核・ミサイル開発や、中国の海洋進出に対抗するための抑止力として必要な要求額であることだけは間違いない。
一方、多くのマスコミは、高価な正面装備の金額にだけ注目するあまり、その他の防衛費の内訳については、あまり関心がないのか、詳細な報道は少ないような気がする。防衛費には自衛官の人件費や、教育・訓練費、そして基地・駐屯地などの施設整備費なども含まれている。正面装備を充実させるだけでは、自衛隊の精強さを維持し活動することはできない。
東日本大震災では、隊員たちが被災地での行方不明者等の捜索活動を行う際に使用したマスクや手袋、ヘッドライト(乾電池も含む)は、ほとんどが私物だった。この状況は現在もほとんど改善されていない。マスクなどは1枚当たりの金額は安価かもしれないが、任務で使用するものであり、当然、予備の枚数も含め支給されるべきものだろう。陸上自衛隊の一部の部隊では、訓練に必要な機材を隊員たちが持ち寄り組み立てて使用しているところもある。
今年4月に起きた熊本地震では、防災拠点となる市役所や役場が耐震化の遅れから大きな被害が出た。同じように自衛隊の基地・駐屯地の建物のなかにも、耐震に問題のある建物がいまだに存在する。特に陸自の駐屯地に耐震に問題のある古い建物が多いようだ。
高価な正面装備からは見えてこない自衛隊の現実の姿を、国民には是非とも知ってもらいたい。
(濱口和久)