自衛隊の看護学校

 自衛隊は、独自に看護師を養成していることをご存じだろうか。

 看護師の養成は、自衛隊中央病院高等看護学院、防衛医科大学校高等看護学院、自衛隊地区病院准看護師課程の3機関で行われてきた。

 そのなかでも特に歴史と伝統を持っているのが自衛隊中央病院高等看護学院だ。だが、防衛医科大学校内に自衛隊中央病院高等看護学院と防衛医科大学校高等看護学院を統合する形で、4年制の看護学科が新設されたため、今年の3月で閉校となった。

 自衛隊中央病院高等看護学院の歴史は、昭和33年、陸上自衛隊衛生学校看護学生課程として女子1期生30人が入学したのが始まりだ。翌年、「婦人自衛官養成所」として自衛隊中央病院に移管され、昭和46年には「自衛隊中央病院高等看護学院」と名称が変更された。

 学生は入学と同時に自衛官としての身分(非任期制隊員たる2等陸士)が与えられ、特別職国家公務員として給与が支給され、入学金、授業料等は免除。入学と同時に全員が営内生活(寮生活)となり、外出も制限されていた。

 平成11年に自衛隊一般教育課程教育基準が見直されると、基本教練、武器訓練、射撃、野外演習、通信、格闘なども授業のなかで実施されるようになった。平成14年から男子にも門戸が開放され、7名の男子1期生が入学した。

 学生は卒業の年の2月に看護師国家試験を受験し、卒業後は日本全国の陸上自衛隊病院や衛生科部隊に勤務している。災害派遣や国際平和協力業務に参加している卒業生も数多い。幹部候補生学校の試験に合格し、幹部自衛官として活躍している者もいる。

 現在、自衛隊中央病院高等看護学院の卒業生は、第1期から今年3月に卒業した第56期をあわせると合計で4160人にのぼる。

 卒業生のなかには、閉校したことを惜しむ声があるが、今後も「自衛隊中央病院高等看護学院イズム」は、自衛隊のなかで生き続けていくに違いない。

(濱口和久)