危機管理の人材育成

 今年4月、防災・危機管理のプロを養成する目的で、東京都世田谷区に日本大学が危機管理学部を開設する。危機管理学部という名前で学部が新設されるのは千葉県銚子市にある千葉科学大学に続いて2校目となる。この動きは他の大学にも拡(ひろ)がることが予想される中、宮城県仙台市にある東北福祉大学では学生防災士の数が500人を超えている。

 防災・危機管理の分野は幅広い。文系、理系の垣根を越えて学ばなければならないからだ。自然災害、対テロ、国民保護、治安、NBCR、法律(国際法)、行政、環境、医療、介護、福祉、建築、耐震、事業継承(BCP)、街づくりなど。人材養成は待ったなしの状況となっている。

21年前の1月17日、兵庫県神戸市を中心に大きな被害を出した阪神・淡路大震災。この震災を機に、首相官邸に内閣危機管理監が置かれ、地方自治体にも防災監や危機管理監が置かれるようになった。加えて地域住民が参加しての防災訓練を本格的に実施する地方自治体も増えている。防災士制度誕生のきっかけとなったのもこのときからである。

 また、今年3月11日で丸5年を迎える東日本大震災では、自衛隊の活動が高く評価された。阪神・淡路大震災でも自衛隊の活動は同様の評価を受けた。その後は数多くの災害現場に派遣されながら、実績を積んできたことは誰もが認めるところだろう。昨年9月に起きた茨城県常総市の鬼怒川決壊の際も、浸水により孤立した住民を自衛隊がヘリで救助する姿は記憶に新しいところだ。

 今年は三重県で伊勢・志摩サミットが開催。2020年には東京オリンピック・パラリンピックも開催される。

 海外でテロが頻発していることを考えれば、これらのイベント中に日本国内がテロの標的になる可能性もある。

 危機はいつ起こるか分からない。日本にはいまだに緊急事態に対応する法制が未整備状態のままだ。想定外の事態が起きたときに迅速な対応を行うためにも、政府・国民が一丸となって危機に備える体制の構築が急がれている。

(濱口和久)