地球益外交のうんざり

 中国・北京市で「世界平和フォーラム」が開催された。フォーラムに参加した鳩山由紀夫元首相は6月21日、講演を行った。その中で安倍政権が「中国脅威論を強調し、積極的平和主義の名の下に、日本国民に集団的自衛権の行使を受け入れさせようとしている」と批判した。

 さらに、鳩山氏は講演で「日本は戦前の時代に戻ってはならない」と強調。自身が首相在任時に提唱した「東アジア共同体構想」の実現を訴え、そのためには「日本の指導者が歴史の事実を直視する勇気を持つことが第一だ」とも述べた。

 鳩山氏は政界引退後、たびたび中国から招待を受け、そのたびに安倍政権の批判や中国寄りの発言を繰り返している。

 鳩山氏は首相就任時、「国益も大事だが、地球益も大変大事だ」「日本列島は日本人だけの所有物ではない」などと発言して、失笑を買ったことがある。

 民主党幹事長時代の平成18年10月19日、モスクワで開催された日ソ共同宣言50周年の日露フォーラムに参加した際には、「北方四島共同管理論」を披歴し、同行した日本の関係者を驚かせる一幕もあった。

 また、沖縄の米軍普天間基地移設をめぐる迷走発言によって、日米関係に大きな溝が生じたことは記憶に新しい。

 オバマ政権で国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたジェフリー・ベーダー氏は、回顧録『オバマと中国の台頭』の中で、鳩山氏が提唱した「東アジ共同体構想」を「ストラティージック・フーリシュネス(戦略的愚劣)」と表現し、批判している。

 「集団的自衛権の行使」の問題でも、鳩山氏は自著の中で、「集団的自衛権の行使を可能にするべき」と書いているにもかかわらず、立場が変われば、自身の以前の主張を封印してでも安倍政権を批判する態度は、首相経験者としてはあるまじき態度である。

 もういい加減、鳩山氏の「珍外交活動」にはうんざりだと思っている国民は、私だけではあるまい。

(濱口和久)