衆院選の先行指標、自民「都議選+200」獲得説も


 東京都議会議員選挙は、いつもドラマティックに動く。平成時代だけを見ても8回の都議選のうち7回までが衆院選か参院選の直前に行われ、その結果に連動している。早い話、都議選はその直後に行われる国政選の「先行指標」なのである。だからこそ菅義偉政権が神経を尖(とが)らせるわけである。

髙橋 利行

政治評論家 髙橋 利行

 ☆消費税が導入された1989(平成元)年の都議選は、あの宇野宗佑が宰相だったから堪(たま)らない。社会党の議席が3倍に増え、自民党は20議席減った。3週間後に行われた参院選では与野党逆転し宇野宗佑は退陣した。

 ☆1993(平成5)年の都議選は政治史に残る「55年体制崩壊」の先駆けとなった。日本新党が20議席と大躍進し、社会党は14議席と惨敗した。3週間後、自民党は分裂のまま衆院選に突入し過半数を割った。新生党や日本新党が議席を伸ばし宰相・宮澤喜一が退陣、細川護熙政権が誕生し、自民党は38年に亘(わた)る「一党支配」に終止符を打った。

 ☆不倶戴天の敵だった社会党の委員長・村山富市を宰相に担いで政権を奪還した自民党は自由党、公明党と連立しながら政権を維持した。だが、2001(平成13)年の都議選では「神の国発言」などで国民から袋叩(だた)きに遭っていた森喜朗では戦えない。「森降ろし」が行われ、後継宰相は小泉純一郎になった。人気絶頂だった田中眞紀子を外務大臣に据え「小泉旋風」が吹き荒れた。都議選に擁立した55人中53人が当選し、直後の参院選でも、自民党は小泉人気に乗って圧勝した。

 ☆2005(平成17)年の都議選は自民党が伸び悩んだ。国政でも衆院を通過して参院に送付された郵政民営化法案が否決されるアクシデントが起きた。「自民党をぶっ壊す」を旗印にした小泉純一郎の「本丸中の本丸」の法案である。変人宰相は衆院解散に踏み切っただけでなく、郵政民営化に反対する、かつての仲間に「刺客」を次々とぶつけ、自民党が296議席と圧勝したのである。

 ☆2009(平成21)年の都議選。宰相・安倍晋三が大臣に起用した「お友だち」が次々とスキャンダルを起こし参院選で惨敗した。宰相は退陣せず粘ったものの持病の悪化で結局、政権を投げ出した。福田康夫、麻生太郎と政権維持を図ったが、サブプライムショック、リーマンショックに襲われ「自民党の終わり」の空気が漂った。都議選にも反映し、自民党が現有議席から10議席減らし民主党は現有34議席から20議席を上乗せし都議会第1党の座に就いた。麻生太郎が「追い込まれ解散」に打って出たが、民主党代表・鳩山由紀夫が普天間基地を「最低でも沖縄県外に」と発言し政権交代への期待が盛り上がった。案の定、衆院選では民主党が308議席と圧勝し鳩山由紀夫政権が誕生した。

 ☆2013(平成25)年の都議選。鳩山由紀夫のあと、菅直人、野田佳彦と民主党政権が続くが、東日本大震災で東京電力福島第一原子力発電所がメルトダウン(炉心溶融)を起こし民主党への期待は萎(しぼ)む。野田佳彦が乾坤一擲(けんこんいってき)打った衆院解散も惨敗、自民党が政権に復帰する。都議選でも59人の候補者全員が当選を果たす。直後の参院選でも65議席を獲得し「ねじれ国会」も解消した。

 ☆2017(平成29)年の都議選は「政治は一寸先闇」を地で行く展開になった。アメリカ大統領にドナルド・トランプが就任し宰相・安倍晋三と太いパイプを築く。だが、「モリカケ疑惑」などに強い批判を受け、都議選では東京都知事・小池百合子が率いる都民ファーストの会が50人の候補者中49人を当選させ第1党になった。自民党はわずか23議席と惨敗した。

 小池百合子は畳み掛けるように国政新党「希望の党」を結成、民進党が丸ごと合流する動きになった。ジンクス通りなら政権交代である。だが、当の小池百合子が「排除の論理」を掲げ、反発した議員が立憲民主党を結成するや失速した。宰相・安倍晋三が衆院を解散して追い打ちをかけ、自民党が圧勝した。

 7月4日に投開票される都議選(定数127)がどうなるか。小池百合子が特別顧問を務める都民ファーストの会は伸び悩んでいる。「女帝」と揶揄(やゆ)される小池百合子自身が過労で倒れたアクシデントが痛い。永田町では、今度の都議選で獲得する議席に「200議席を加算した数」が、秋の衆院選で自民党が獲得できる議席数になると囁(ささや)かれている。これなら単独過半(233議席)に手が届く。

(文中敬称略)

(政治評論家)