モノクロ写真の力に驚くーブラジルから


地球だより

 ブラジルを代表する写真家といえば、ドキュメンタリー作家として世界的に知られるセバスチャン・サルガド氏が挙げられる。最新作の「アマゾニア」では、何年もの時間をかけてアマゾン熱帯雨林の深くにまで入り込み、原始生活を営むブラジル先住民の生活やアマゾン熱帯雨林の姿を写し取っている。

 学生時代から写真を趣味としてきた記者も、サルガドファンの一人だ。サンパウロの古本屋を巡り、絶版となっているサルガド氏の写真集を見つけた時の感動は今でも忘れられない。

 同氏の撮影スタイルは、長期にわたって一つのテーマを追い続けることで知られる。写真は全てモノクロだ。難民や労働問題、環境破壊など人類と地球が抱える課題を、光と影の描写を通してわれわれに突き付けてくるのだ。

 一昨年のことになるが、サンパウロの美術ギャラリーでサルガド氏の写真展を見る機会があった。1980年代に撮影された初期の代表作で、ブラジルの金鉱山で働く鉱夫たちの群像を描いた「GOLD」だ。

 プリントは全て、古いモノクロフィルムを最新技術でデジタル化し、厳選されたプリント職人の手で仕上げられたオリジナルだ。写真展示に特化された会場に飾られた数十枚の巨大な写真は、今まで見たどの写真展よりも訴える力に満ちたものだった。日本で見てきた写真展の概念を崩されたと言っても過言ではなかった。

 日本に一時帰国した際には、都内で写真展を巡ることも多い。ただ、カメラ王国として君臨する日本に、サンパウロの一流ギャラリーに匹敵する会場がどれだけあるか。サルガド氏の写真展を通じて、芸術を愛するブラジル文化の深みを見せつけられた。

(S)

(サムネイル画像:Wikipediaより)