中国が年最大64兆円の技術窃取、米FBIが最新報告


ビル・ガーツ氏

 

 中国による技術の窃取で米国経済が年間2250億㌦(約24兆円)から6000億㌦(約64兆円)の被害を受けていることが、連邦捜査局(FBI)の最新の報告「中国-米実業界へのリスク」で明らかになった。

 報告は「中国政府は、知的財産権の主要侵害国であり、法と規制で外国企業を不利にする一方で、自国企業を有利にしている」と指摘。外国企業は、相互主義に基づき、法の支配の下で活動しなければならないが、「中国政府はこのルールに従っていない」と非難した。

 報告によると、中国は、合弁事業、企業スパイなどさまざまな手法を使って盗み出した大量の技術で軍を近代化している。

 さらに「(中国は)世界的大国として米国と並び、超えようとしている。非民主的、全体主義的な考え方で形作られた価値観で世界に影響を及ぼそうとしている」と強調するとともに、中国政府が、外国の知的財産と企業秘密を入手するための数多くの計画を推進していることも明らかにした。

 中国は、ハイテク産業育成策「中国製造2025」で、情報技術、NC(数値制御)工作機械、ロボット工学、航空宇宙機器など10の業種で優位に立つことを目指している。

 報告には具体例として、中国政府の支援を受けた企業が、米企業から特殊なトウモロコシの種を盗み出した事件を紹介。風力発電タービンの設計事業を中国企業に売却した米半導体企業が、同じ中国企業にハッキングされ、秘密情報を盗み出された例も挙げている。

 また、米国防企業の技術者が中国に重要な軍事技術を引き渡したとして6年の懲役刑を宣告された。「この技術者は、ミサイル、ロケット、標的探知機、無人機の誘導システムの能力、設計に関する数千件ものデータを盗み出した」とされている。

 報告は、「中国の機関は、軍用機、高速列車、原子炉など外国の技術を取り入れ、それを基に新しい、高度な技術を生み出している。これによって中国は発展を遂げ、短期間で、少ない予算で研究・開発を進めてきた」と、中国の発展が盗み出された技術を基に進められてきたことを強調している。

 FBIは、米企業に中国の産業スパイに対抗できるよう、しっかりとしたセキュリティー戦略を立てるよう呼び掛けた。