割高な携帯料金の規制に「理解」を示す読売、日経は「時限措置」強調
◆やむを得ぬ政府介入
通信料が高いと批判されてきた携帯電話について、総務省が、2年契約を途中で解約する際の違約金上限を1000円に引き下げる―などとする新たな省令案をまとめ、今秋に施行する予定である。
これについて、社説で論評を掲載したのは読売、日経、本紙の3紙で意外に少なかった。各紙の見出しを挙げると、以下の通りである。読売(19日付)「携帯解約金下げ/『囲い込み』是正し競争促進を」、日経(21日付)「携帯料金規制は時限措置で」、本紙(同)「携帯違約金/料金引き上げへ知恵絞れ」――。
3紙のうち、特に強い主張を打ち出しているのが日経である。「自由で健全な市場経済」を基本理念に謳(うた)う経済紙らしく、総務省の新規制を「具体的な料金設定に口をはさむ異例の細かさだ」と批判的に論評する。
ただ、そうは言うものの、「一方で、いまの携帯市場は様々なゆがみが生じており、競争原理が機能してないのも事実だ」として、「政府は新規制を時限的な措置と位置づけ、早期に市場の健全さを回復したうえで、料金への介入をやめるのが望ましい」というわけである。
確かに、資本主義、自由主義経済にあっては規制はできるだけ少ない方がいいが、問題はどのくらいの時限措置で「様々なゆがみ」が是正できるかである。
日経は、数値を明示した「異例の規制」の背景について、昨年8月に菅義偉官房長官が「携帯料金は4割程度下げる余地がある」と発言したことが念頭にあるのだろう、「携帯料金の高さと分かりにくさに業を煮やした政治の意向が作用したようだ」と指摘。欧米各国に比べて、日本の携帯料金がなかなか下がらない状況に、「一時的な政府の介入はやむを得ない」と認める。
◆アップル偏重を是正
今回の新規制は、5月に成立した改正電気通信事業法の施行に向けた省令改正によるもの。新規制は前述の違約金の上限設定のほか、通信契約とセットでスマートフォンなどを販売する際の値引きの上限を原則2万円とした。
新規制で導入した、通信料と端末代を分ける「分離プラン」について、日経は端末を頻繁に買い替え多額の補助を受ける人と、同じ端末を使い続ける人の不公平を是正することのほか、米アップルのアイフォーンなど一部機種に補助が偏り、端末市場の競争が阻害されている現状を改めるのも目的と指摘。アップル偏重の是正には国産端末メーカーの奮起を促す意味もあり、さすが経済紙と思わせる指摘である。
読売も「国が民間の料金に細かく介入するのは望ましくない」とするものの、例えば、現状、2年契約で大手では中途解約に9500円かかるが、それが上限1000円となることで「他社への乗り換えのハードルを大幅に低くして、過度な顧客の囲い込みを是正する狙いは理解できる」と評価。また「2年縛り中心の事業モデルが崩れる可能性は高く、消費者の選択肢が広がる意義は大きい」と強調する。
読売は、大手3社の解約率が1%に満たず、市場での寡占状態が続いているとして、「利益率は20%前後と大手メーカーなどより高い。競争促進の余地があるのではないか。ルール見直しはやむを得まい」としたが、その通りである。
◆端末価格抑制に期待
また同紙は、分離プランの導入で端末価格は一時的に値上がりするとみられることから、「端末メーカーは中・低価格帯の品ぞろえを充実させるなど、端末価格を抑える努力をしてもらいたい」としたが、これは日経が指摘したアップル偏重是正の裏返しである。
本紙は主に大手3社に料金引き上げへの努力を求めた。また、分離プランや端末代の値引き上限が2万円となることで、高機能端末が売れにくくなり、次世代通信規格5G普及の妨げになるのではと懸念したが、日経もそうした思わぬ副作用が出ないか、目を光らせる必要があるとした。
(床井明男)