平成の日本経済を振り返る読売、毎日社説になぜか「消費税増税」なし
◆新鮮味を欠いた結論
平成が幕を閉じ、令和がスタートした。新しい時代の日本経済はどんな展開を迎えるのか、見詰めていきたい。
では、平成30年間の日本経済はどうだったのか。平成の経済を振り返る社説を掲載したのは読売と毎日の2紙で、どちらも4月27日付に通常2本立ての枠に1本でまとめた大社説である。
それぞれの見出しを掲げると、読売「平成の経済/危機の教訓を新時代に生かせ/好循環へ攻めの投資が大切だ」、毎日「平成を送る/日本経済の低迷/成長の芽を探し続けよう」である。
読売はマクロ的な視点から、毎日は主に企業サイドのミクロ的な視点からの回顧と違いはあったが、結論的には似たようなものになった。
読売は、「企業が蓄えた内部留保は、平成の間に約4倍になり、個人の現預金も2倍以上に膨らんだ」とし、「この滞留資金を動かすことが、平成にやり残した最大の課題である」と指摘。消費と投資拡大による好循環を実現するため、そうした眠れる資金を有望分野のロボットやAI(人工知能)などによる「第4次産業革命」を対象に、「企業が『攻め』の投資を積極化し、民間主導の技術革新を目指したい。人手不足対応の省力化投資も欠かせない」と訴えた。
毎日も、日本にはものづくりで培った技術があり、高品質の製品が多く、海外でも依然評価が高いとして、「第4次産業革命を日本の成長に結びつけるには、そうした強みを生かすべきだろう」と。
また同紙は、日本では小さな新興企業がAIを生かしたロボットの開発に取り組むケースも出てきているとして、「令和の時代もしばらくは手探りかもしれない。大事なのは成長の芽を粘り強く探し続けることだ」と強調した。
こうした結論は、これまでも指摘されてきた内容でもあり、新鮮味に欠け、やや物足りなさが残った。
◆デフレ長引く原因に
もっとも、そうした物足りなさ感以上に、怪訝(けげん)な感じを持ったのは、両紙とも消費税増税に全く触れていない点だ。
消費税は平成元年(1989年)4月に税率3%でスタートし、同9年(97年)4月に5%に、同26年(2014年)4月には8%に引き上げられた。今年10月には10%に増税される予定である。
消費税は国民に広く薄く、安定的に徴収できるため、財政健全化のための主要な手段として導入され、税率が徐々に引き上げられてきた。
読売は「平成の30年、日本経済は幾度もの危機を乗り切り、緩やかな景気回復で終わろうとしている」「とはいえ、デフレが長引き、経済の血液である資金の流れは滞ったままだ」としたが、日本経済が「緩やかな」成長つまり低成長になったのは、消費税増税の影響が少なくない。
特に平成9年の橋本政権時の増税は歳出削減策と相まって強いデフレ効果を与え、それまで先進国で高い成長率だった日本経済を、その後は先進国一低い状況に転落させた。第2次安倍政権でも、増税の悪影響から、過去2回延期にもなった。
デフレ脱却を目指した安倍政権は、大胆な金融緩和と財政政策などで当初、日本経済を順調な回復軌道に乗せたが、同26年の増税は途上にあったデフレ脱却の勢いを削(そ)ぎ、「デフレを長引」(読売)かせる結果となったのである。読売は「平成の教訓を踏まえながら、本格的な成長軌道への道を探りたい」としたが、それなら消費税増税に触れないわけにいかないはずだが…。
◆増税の悪影響説かず
バブル崩壊の対処で「銀行救済に血税を使うのか」との世論に押され、抜本処理が遅れたことに、読売が「世論への迎合は、時として冷静な政策判断をゆがめてしまう。今後の戒めとなろう」とした点には同感だが、消費税増税について、財政健全化には不可欠と説き、経済成長にその悪影響を説かない最近の同紙の論調は気になるばかりだ。





