「笛吹けど踊らず」の印象強い18年10~12月期GDP日経、読売社説

◆昨年と同様の見出し

 今年10月には税率8%から10%への消費税増税を迎えるというのに、実に頼りない数字である。

 14日に公表された2018年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0・3%増、年率換算では1・4%増だった。2四半期ぶりのプラス成長となったが、昨年夏の自然災害で落ち込んだことの反動が出たとすれば、とてもいい数字とは言えない。

 国会では統計不正問題に絡み、野党議員から“アベノミクス偽装”の追及がかまびすしいが、GDPなどの実績からみれば、仮に偽装があったとしても、この程度であり、どれほどの意義があるのか頭を傾(かし)げたくなる。

 さて、このGDP統計に、社説で論評を掲載したのは、日経、読売、本紙の保守系3紙のみ。米中貿易摩擦が長期化し、世界経済が減速あるいは変調の兆しを見せている時期での重要な統計と思うのだが、少々寂しい限りである。

 3紙の社説見出しを掲げると、日経15日付「外需に左右されない成長基盤の構築急げ」、読売16日付「成長底上げへ前向きな投資を」、本紙「力強さなく増税後が心配だ」である。

 テーマがテーマだけに、仕方がないとは思うのだが、今回と同じように、速報値で2四半期ぶりのプラス成長だった18年4~6月期GDPに関する日経の見出しは、「内需主導の持続的な成長を固めたい」(昨年8月11日付)で今社説と意味はほぼ同じ。同日付の読売も「景気回復の持続力を高めたい」で、これも言葉としては目的とそのための行動を示す違いはあるが、言わんとする内容は同意。本紙も挙げると「内需改善も先行きに強い懸念」(同8月14日付)だった。

 ここで指摘したいのは、それだけ、日本経済の抱える課題が依然として解決されずにいるということ。そして、それを論評する社説の見出しに象徴される内容も似たようなものになってしまい、「笛吹けど踊らず」の印象を強く抱いてしまうことである。

◆春闘への影響触れず

 以下では、それでも気になる点を挙げてみたい。

 日経では、「先行きの海外景気には一段の警戒が欠かせない」と指摘し、米中貿易摩擦では、その「落ち着きどころは予断を許さず」、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる混迷などでは「欧州経済でも難題が山積する」としながら、それらが春闘での賃上げに与える影響について、言及がないことである。

 あるのは、見出しにあった「海外需要の変動に左右されにくい、国内の成長基盤を着実に固めるべき局面」のため、「企業経営者は潤沢な手元資金を活用し、中長期を見据えた省力化や情報化投資に取り組んでほしい」という注文で、それには「賃上げを含む、人材投資の視点も欠かせない」ということである。

 読売が指摘するように、景気の先行き懸念の強まりから、好調だった企業業績に陰りが見られ、19年3月期の業績予想を下方修正する企業が相次ぎ上場企業全体で3年ぶりに減益となる公算が大きくなってきた中で、賃上げへの影響がないわけはないと思うのだが、日経にはそれがないのである。

◆消費税への言及なし

 一方、その読売では秋の消費税増税に関する言及が、どういうわけか全く見当たらないのである。

 「経済成長率はプラスに転じたが、その勢いは緩やかだ」とし、「成長率の水準も、前期の年率マイナス2・6%を取り戻す勢いはない。18年の年間では実質0・7%のプラス成長だったが、前年の1・9%よりも減速した」と懸念を示しながら、景気へのマイナス影響の大きい消費税増税については触れず、日経同様、巨額に積み上がっている内部留保を使って、可能な範囲で社員の処遇改善など「人への投資」を進めてもらいたい、とするだけ。

 もっとも、読売は経済の実力を示す潜在成長率の底上げへ、また内需主導型経済の柱になり得るものとして、デジタル分野の革新――AI(人工知能)や自動運転、ドローン活用など――を挙げ、その分野への積極的な資金投入を期待したいとした点は、具体的な提案として評価できる。それだけに、消費税増税への言及がなかったのは残念である。

(床井明男)