経済社説で今年を課題解決の好機と強調し取り組み訴えた日経、産経

◆就労と年金を再検討

 2018年最初の東京株式市場は、日経平均株価(終値)が741円高の2万3506円と26年ぶりの高値を付けるなど、幸先の良いスタートを切った。そんな新年の経済社説で、今年を課題解決の「好機」と捉え、取り組みを訴えたのが日経、産経である。

 まず日経1日付社説「順風の年こそ難題を片付けよう」は、政府が最優先でやるべきこととして、「超高齢化社会を乗り切る社会保障と財政の見取り図をきちんと描くことにつきる」と強調する。

 団塊の世代が全員、後期高齢者になる25年以降、社会保障支出の膨張を抑えるのがどんどん難しくなるからだ。

 今後20~30年は生産年齢人口は減るのに後期高齢者は増え続ける時代で、健康寿命が延びているのに従来の年齢区分で高齢者への社会保障給付を優遇する仕組みは時代遅れ、というわけである。

 日経はそこで、65歳以上の労働力も高まっているから、「就労機会をさらに確保して、年金の支給開始を段階的に70歳まで延ばすにはどうしたらいいか、総合対策を検討したらどうか」と提案する。もっともな指摘である。

 同紙はさらに、19年秋に消費税増税が控えているが、「問題はその先」として、「消費増税がデフレの再来や円高進行をもたらさないか注意しながら、『緩やかで継続的な税率上げ』を進める知恵がいる」と指摘する。

 だが、これは「知恵がいる」というより、解答があるのか難問と言わざるを得ない。

 制度改革だけでは増え続ける社会保障費に不十分なため消費税増税は不可避であるとの前提で、例えば、税率を毎年1%ずつ上げていくというやり方である。増税によるデフレ効果はあるが、国民がやがて“増税慣れ”して次第にその影響は少なくなる――こうした考え方は、政府の内外にあり、もっともそうである。

 ただ、年々アップしていく消費税率に国民が、都合よく“慣れ”ていくのか、より重く負担に感じていくのかは、やってみなければ分からない社会実験であり、後者だったら経済へのダメージは相当のものであろう。この「継続的な税率上げ」は、実施までに相当に経済を強くすることが必要であり、それが実現できるかである。

◆企業に賃上げ求める

 現実性という点では、産経7日付の「経済再生/脱デフレの好機逃すな/賃上げで回復の実感高めよ」の方が、分かりやすく説得力がある。

 産経が指摘する課題は明確で、「企業や家計に染みついたデフレ心理を払拭し、成長を実感できる力強い経済を実現する」である。

 「長らく指摘されたきたこの課題に、明確な答えを出さなければならない。具体的な行動にさっそく取りかかることが肝要である」として、産経が強調するのは「(企業が収益を伸ばした)成果を設備投資や賃上げにつなげ、個人消費を喚起する」ことである。

 そのため企業に対し、「経済の活性化には、十分な賃上げが不可欠だというのは、社会的な要請でもある」として、「これに応える前向きな経営判断を期待したい」と婉曲(えんきょく)的ながら確固たる行動を求めた。

 要請は企業に対してだけではなく、「安倍晋三政権の役割は引き続き大きい」として、「成長力を底上げする改革を加速すべきだ」と訴えた。

 同紙は言う。「この5年間ではっきりしたことは、長期デフレや人口減少の影響により、財やサービスを生み出す日本経済の供給力が小さくなったことだ。だから、景気が上向いた途端に人手不足が顕在化する」と。だから、これを打開するには、生産性を高めて効率よく付加価値を得られる経済の体質改善が必要であり、その点で政府の「生産性革命」の方向性は妥当なものだが、「構造転換を促す環境整備を一層進めてほしい」と強調する。

◆柔軟な金融政策要望

 同紙はまた、脱デフレを確実にする「もう一押しが焦点」として、柔軟な金融政策を求めた。日本に限らず欧米でも物価が上がりにくくなっているため、「2%という数字そのものではなく」、「物価が趨勢的に上昇するかどうかを慎重に見極めなければならない」との指摘は同感である。

 一段の投資や賃上げは、日経も企業の努力として求めている。他紙では朝日が4日付社説でやはり、後ろ向きの姿勢が目立つ企業に対し、成長と分配の両立を求めた。

(床井明男)