今年の日本経済を楽観的に予測するも「地政学的リスク」を指摘する3誌
◆株価は今後も上昇か
年明けから株高が続いている。1月4日の東京株式市場大発会では日経平均株価の終値が前年末比741円39銭高の2万3506円33銭と大幅に上昇。1992年1月7日以来26年ぶりの高値となった。そして翌日5日の終値も前日比208円20銭高の2万3714円53銭と上昇基調を醸し出している。株価は経済の先行指標とされているが、市場関係者の間では企業業績の改善を背景に今後も上昇するとみており、「今年中には2万5000円程度まで上昇する」との予想が多い。
ところで、東洋経済、ダイヤモンド、エコノミストの週刊経済誌3誌は年末に恒例の翌年の経済予測を特集した。もっとも、経済を中心に企画を組んだのはエコノミストで、2週にわたって日本経済予測(2017年12月26日号)、世界経済予測(18年1月2、9日合併号)を特集。一方、東洋経済(17年12月27日、18年1月6日合併号)とダイヤモンド(同)は経済分野にとどまらず、政治、文化の広範囲にわたって予測を展開する。
そこで今年の日本経済の展望予測を見ると3誌ともプラスの見通しが並ぶ。「日本銀行が掲げる2%の物価目標には到底届かないものの、デフレ脱却が鮮明になっている」(東洋経済)、「人手不足は深刻化しつつある。とはいえ、人手不足が賃金の上昇をもたらし、消費を回復させる要因となりそうだ」(ダイヤモンド)と昨年に引き続き、堅調な日本経済を予測。
株価に関して言えば、エコノミストが「トランプ米大統領がイスラエルの首都としてエルサレムを認めることの方針が伝えられた12月6日には2017年最大の下げ幅を記録したが、わずか3営業日で回復、この強固な株高の流れは18年も一段と加速するだろう」(イェスバー・コール=ウィズダムツリージャパンCEO)と指摘、さらに「4月下旬から始まるゴールデンウィークを前に日経平均が3万円に到達し、年末までには3万2000円程度まで上昇すると考える」と言い放っている。
◆北朝鮮より中国注視
一方、こうしたプラスの予測を打ち消すマイナス材料としては3誌とも「地政学的リスク」を挙げる。確かに昨今の北朝鮮情勢あるいは中東情勢を見ればおのずと、それらの要因が世界経済に暗雲をもたらすということは容易にうかがえる。問題はその可能性がどの程度のものなのか、ということである。
とりわけ北朝鮮情勢についてダイヤモンドは、「地政学リスクの最たるもの」とし、「軍事衝突への警戒感は拭えない。…挑発行為を受けたトランプ氏らの決断次第で一気に情勢が緊迫する可能性も取り沙汰され、関連日程を頭に入れておいて損はない」と警鐘を鳴らす。
ただ、地政学リスクを捉える場合、捉えておかなければならない重要ポイントは、単に日々の出来事を見るのではなく、その地域の地理的条件ばかりではなく国民性やたどってきた歴史を熟知しておく必要があるということ。そうした点を踏まえてみると注視しなければならないのは北朝鮮以上に中国ということになる。
中国の根底にある中華思想には「四夷(東西南北の蛮族)を開化(文明化)」させる「冊封(さくほう)」という外交政策があった。周辺国から朝貢させ、その代わりに将軍の称号や下賜品を与えるやり方は今も変わっていない。アフリカや東南アジア、中央アジアの発展途上国に経済的軍事的援助をふんだんに与えながら、影響力を及ぼしていく。アジアインフラ投資銀行(AIIB)は「一帯一路」を実現するためのひも付き支援であることは自明となっている。
またシーパワー大国を目指す中国において2期目に入った習近平総書記は南・東シナ海への海洋覇権進出の動きを今後もさらに活発にさせていくのは必至。そうなれば米日と中国の一時的な軍事衝突も十分に考えられるのである。
◆平成終わる節目の年
ところで、今回3誌の中で目を引いたのが東洋経済の「さらば平成」と題して「平成」という時代に焦点を当てた企画である。今上天皇が19年4月末に退位されることで30年余りの平成という時代が幕を下ろす。まさに「平成とは何だったのか」と問うているのである。
この30年まさに激動の期間で、国際的には1989年6月に天安門事件、11月にベルリンの壁崩壊という歴史的大事件が起こり、12月には日経平均株価が3万8915円という史上最高値を付けて始まった。その後のバブル崩壊と20年に及ぶ景気低迷さらに国際紛争とテロという混迷の状態に入り込んでいる。
そういう意味では平成の終わりの2018年は節目の年と言えるが、東洋経済が示すように、この30年を個々人が振り返り見詰めながら新しい時代の絵図を描いてみるのも意義あることだろう。
(湯朝 肇)