LGBTのパートナー解消記事を短信で扱い制度の検証を怠る朝日

◆関連記事かなり減少

 東京都渋谷区で、同性カップルの関係を「結婚に相当する関係」と認めて、その証明書を発行することを盛り込んだ「同性パートナーシップ条例」が施行してから、もうすぐ3年になる。実際に証明書の発行を始めてからはまる2年を過ぎた。

 同性愛者をはじめとした、いわゆる「性的少数者」(LGBT)に対する意識啓発の意図から作られた条例であり、証明書発行の制度だが、これらをきっかけに、一時はリベラル・左派の新聞を中心に、LGBT関連の記事を頻繁に掲載するようになった。これだけでも条例の狙いはある程度当たったと言えるかもしれないが、ここに来て関連記事はかなり減っている。

 全国紙と東京新聞で過去1年間、LGBT関連記事がどれだけ載ったのか。新聞・雑誌のデータサービス「日経テレコム21」で、「LGBT」を検索すると、ヒットした数は1600件を超えた。しかし、過去1カ月に限ると、53件だけ(昨年12月31日現在)。最も多かったのは東京14件。その後に朝日13件、毎日8件と続いている。記事が少なくなっているとはいえ、左翼偏向度が高い媒体ほど、パートナーシップを全国に拡大し、最終的には「同性婚」を実現しようとするLGBT活動に肩入れしているのが分かる。

◆解せぬ渋谷区の対応

 そんな中で、昨年末に毎日新聞以外の各紙が扱った動きがあった。渋谷区のパートナーシップ証明書の第1号であり、LGBT活動の象徴的な存在となってきた元タカラジェンヌと会社経営者のレズビアン・カップルがパートナー関係を解消し、区に解消届けを出したというニュースだ。

 各紙ともさほど大きな扱いではなかったが、中でも目立たなかったのは朝日の記事。簡単な事実関係だけを短信で載せていた。2人は関係解消をブログで公表したが、その報告には次のような内容があった。

 「現在日本のLGBTをとりまく環境が、日に日に改善している中で、私たち個人が出したこの結論が、その流れに水を差すことになってしまわないか、その懸念についても、慎重に話し合ってきました。非常に重い責任を感じております」

 渋谷区の条例成立や、2人がパートナーシップの第1号となったニュースを大きく報道するなど、LGBT活動を後押ししてきた新聞が一転、関係解消となると、その記事を小さく扱ったのは「流れに水を差す」と懸念したからではないのか。しかし、2人が思い切って関係解消を公表することで、第1号としての責任を果たしたのに比べると、事実関係を短信で報じただけでは、朝日は、メディアとしての責任を果しているとは言い難い。

 もっと解せなかったのは渋谷区の対応である。本紙は区当局者に取材し、これまでにパートナーシップ証明書を発行された25組のうち何組が関係解消しているかを聞いた。それに対し、「個人情報となるので、行政としては申し上げることができない」として、公表を避けた。証明書の発行がスタートしたのは、2015年11月。それから2年が過ぎ、これまでに何組解消したかは、制度の意義を検証する上で、不可欠な統計である。決して個人情報ではない。

◆制度の問題点露わに

 「子は鎹(かすがい)」という諺(ことわざ)がある。人間関係というのはもろく、たとえ夫婦でもけんか別れの可能性がある。しかし、子供がいれば、その子供への愛情のおかげで夫婦の縁を切らずに済むという意味だ。

 逆に言えば、鎹のない関係は人間のエゴが表に出て関係が破綻しやすくなる。たとえ、パートナーシップ制度ができても、子供が生まれない同性カップルの関係は破綻しやすいことは推測できる。メディアが検証すべき点である。

 さらに問題なのは、LGBT活動を後押しする新聞ほど、ごまかしの上に成り立っているパートナーシップ制度への切り込みを怠っていることである。結婚とは、子供が生まれる可能性を前提にした制度だ。高齢カップルなど、もちろん例外もあるが、男女に限定にしている結婚の本質は、本人だけでなく、子供のためでもある。にもかかわらず、自然には子供が生まれない同性カップルの関係を、渋谷区の制度は「結婚に相当する関係」としたのは欺瞞(ぎまん)であろう。前出のレズビアン・カップルは関係解消を報告したブログで「私たちはふうふとして」と書いた。ひらがらを使ったのは「夫婦」でないことをごまかすためである。

 パートナーシップ条例の施行から3年近くになると、「人権尊重」という大義名分に隠されてきた制度の問題点が露(あら)わになってくるものである。これまでLGBT活動を後押ししてきた新聞であればこそ、条例が本当に必要なのかどうかを検証する責任がある。

(森田清策)