5.5兆円の経済対策にも八つ当たりした朝日、軽減税率を説く読売
◆やっと経済に出番が
特定秘密保護法が6日、ようやく制定された。独立国家の一つの体をなすものとして、当然あるべき法律がやっとできたわけである。
本紙8日付社説が指摘するように、朝日、毎日とも、いわゆるゾルゲ事件や西山事件で“前科”があるからなのか、両紙とも社説の連載などで異様な反対キャンペーンを繰り広げた。
そのためか、前回小欄でも指摘したが、同じリベラル系の東京を含め、朝日、毎日の3紙は7~9月期の国内総生産(GDP)では論評なし。前述の通り、秘密保護法に関するものばかりが目立った。
そして、今回取り上げる5・5兆円規模の経済対策(5日の閣議決定)についてみると、翌6日付で社説を載せたのは、いずれも保守系の読売、産経、日経の3紙のみ。またもリベラル系新聞はなしかと思っていたら、休刊日明けの10日付で朝日が載せた(1本建て社説の本紙は11日付)。秘密保護法が成立してしまったので、担当の論説記者にも出番がやっと回ってきたということであろうか。毎日、東京はいまだなし。
その朝日社説。「何でもあり」は筋違い、が見出しのタイトルである。
「3%幅の消費増税による年間の税収増をそっくりはき出そうかという大盤振る舞い」「『防災』を掲げ、自治体への交付金を増額する」「来年度の当初予算案向けに予定していた分を前倒しして補正予算に押し込み、来年度予算は見かけ上、抑え気味にして『財政再建に目配りした』と胸を張るつもりなのか」……
秘密保護法成立に憤懣(ふんまん)やるかたない思いが断ち切れないのか、「むろん、消費増税をはさむ駆け込み需要と反動の落ち込みをならし、安定的な経済成長へとつなげる工夫はいる」と一部評価はするも、「何でも」批判せずにはおれないという感じの内容である。
だが、肝心の、この経済対策で本当に景気腰折れを防ぐことができるのか、デフレ脱却を果たし自律的成長に移行できるのか、という点については言及なし。
◆産経も公共事業言及
この点を指摘したのは、読売と本紙。読売は「消費増税後の景気失速を防げ」の見出しの通り、政府に経済運営に万全を期すよう求めた。
同紙は、対策の柱である企業の活力を引き出す取り組みや公共事業を評価しつつも、「増税の悪影響を和らげるには、個人消費を下支えする政策の充実が必要ではないか」と指摘。予定通り15年10月に消費税率を10%に引き上げる場合には、「より幅広い消費者に恒久的に恩恵が行き渡る」軽減税率の導入が欠かせないと訴える。
本紙も低所得者世帯への現金給付だけでは「手薄」として、軽減税率導入の必要性を指摘。さらに、来年4~6月期GDPが、消費増税前後の駆け込み需要と反動減からマイナス成長が見込まれることから、「デフレ脱却への流れを途切れさせてしまう分、それを元に戻し、自律的景気拡大に持っていくには、より多くのエネルギーが必要になったとの覚悟が求められる」として、公共事業を中心とした継続的財政支援を求めた。
公共事業については、産経主張も、急速な景気の落ち込みをなるべく小幅にとどめ、早期に回復させるためには、「景気への即効性が見込め、波及効果も大きい事業などに、重点的に資金配分していくことが欠かせない」と強調するが、妥当な指摘である。
もっとも、産経の主眼は、見出しが「民間も成長へ全力尽くせ」とあるように、企業も政府の支援策を活用して、「機動的な設備投資や賃上げに取り組み、官だけに頼ることなく、自ら景気の腰折れ防止に全力を挙げなければならない」ことにある。
ただ、この企業の努力については読売にも同様の指摘があるが、営利を目的とする民間企業にどこまで望めるのか。あくまで要望でしかない。
◆当面は政府が投資を
日経は見出しが「公共事業に頼りすぎるな」で、成長戦略の中身を充実させる方にもっと力を入れよ、という主張である。
確かに一理あるが、成長戦略は要は企業の投資を促すインセンティブにすぎない。ましてやいまだデフレ脱却途上であり、今回の対策は増税による景気腰折れ防止が主眼である。当面は政府が自ら投資を主導して景気回復を牽引(けんいん)して行かざるを得ないであろう。
(床井明男)