日銀「マイナス金利」に「決意」「限界」「懸念」などと評価分かれた各紙

◆株価対策に読売理解

 日銀が「マイナス金利」の導入を決めた。1年3カ月ぶりの追加緩和策で、2月16日から適用する。

 マイナス金利は欧州の一部の国で適用されているが、日本では今回が初めて。金融機関が日銀の当座預金に必要分を超えて新たに預け入れる際の金利を現行の0・1%からマイナス0・1%に引き下げる。超過分については逆に金利を徴収するのである。

 要は、金融機関は必要以上に日銀に預けないで、企業への貸し出しなどに励め、ということ。また、金利全体が下がることで、消費や投資にプラスに効く、というのが日銀の狙いのようである。

 各紙の論評は、以下に記した社説見出しの通り、三つに分かれた。1月30日付で、朝日「効果ある政策なのか」、読売「脱デフレの決意示す負の金利」、毎日「苦しまぎれの冒険だ」、産経「日銀頼みの限界忘れるな」、日経「日銀頼みにせず市場安定へ協議を」、31日付で東京「追い込まれての弥縫策」――。

 日銀の黒田東彦総裁が政策決定後の会見で語ったように、デフレマインドの転換という点での「強い決意の表れ」と評価したのが読売。

 それが結果として、株式市場はサプライズ決定として好感。日本ばかりでなく、「国際金融市場が年初から大混乱に陥り、世界経済の先行き不安が強まる中、日銀が機動的な対応を取ったことは評価できる」というわけである。

 マイナス金利には、日銀総裁が説明するように、民間金融機関により積極的な融資を促し、企業の設備投資などを活性化する狙いがある。

 ただ、その効果は限定的とする見方もある。巨額の内部留保を抱える大企業は資金不足で投資を控えているわけでないからだ。また、日銀に逆に金利を支払うことになる金融機関の収益を圧迫する心配もある。

 読売は、そうした点に触れながらも、「だが、金利水準が全体的に下がれば、リスクをとっても利益を得たい投資家の動きが活発となり、円高の防止や株価を押し上げることが期待できるのではないか」と強調する。逆に言えば、デフレ脱却への妨げになりかねない最近の株価対策上、取らざるを得なかったということであろう。

◆停滞は消費増税から

 産経は、読売が評価した「決意」を認めると同時に、「これは、安倍晋三政権が期待するほどには経済再生を果たせていないことを示している」として、「金融頼みには限界がある」ことを強調。政府や企業に「規制緩和などで企業活動を後押しし、民間が前向きな経営に徹する」ことを訴えた。

 産経が「限界」とみるのも尤(もっと)もで、「もとより、世界経済が混迷の度を深めているのは、米利上げに伴う新興国からの資金流出や中国経済の減速、さらには原油安が重なったため」で、こうした「海外要因に大きな変化がなければ、日銀だけが動いても効果は限られ」るからである。

 日経も産経とほぼ同様。同紙は、日本経済が再び物価の持続的な下落であるデフレ局面に戻る事態は避けなければならず、そのための日銀の対応は「理解できる」と評価。ただ、日銀の金融緩和だけで経済を持続的に改善させるのは難しいとして、「政府は成長戦略を加速するとともに、経済の下押し要因となっている金融市場の安定に向け、20カ国・地域(G20)での政策協調の議論を促すべきだ」と強調する。

 現状に至っては日経の指摘の通りだが、日本経済が停滞しデフレ傾向を強めるようになったのは、同紙などが実施を強く主張した消費税増税からである。この点を同紙はどう思っているのであろうか。

◆批判の資格ない朝毎

 朝日、毎日、東京はマイナス金利に懸念や疑問がある点に重きを置いた。「歴史的な超低金利のもとでも銀行が貸し出しを大きく増やさないのは、企業の資金需要が乏しいからである。その根本的な問題がマイナス金利の導入によって解消するわけではない」(朝日)からである。

 確かにその通りだが、資金需要を乏しくしているのは、朝日や毎日も主張した消費税増税(1997年の前回も含む)が大きな要因である。今回はそれに中国経済の減速などの影響が加わった形だが、両紙に果たして日銀の現状を批判する資格があるのかどうか。

(床井明男)