北海道の高校生が地元食材で独自の商品開発
商業系高校が札幌市内のスーパーで「商業教育フェア」
少子高齢社会で人口減少が叫ばれる中、地域の人材育成が急務となっている。そうした中で実践力・即戦力を育成する職業高校への関心は高い。札幌市内でこのほど、全道の商業に関わる学科で学ぶ高校の生徒たちが集まり、それぞれの学校が地元の企業と開発した商品を紹介し販売する「北海道高等学校商業教育フェア」が開催された。(札幌支局・湯朝 肇)
身だしなみや接客マナーも点検、地域の人材育成へ
「それでは参加校の生徒の皆さん、あいさつの練習をしましょう。お辞儀は背筋を伸ばし、30度の角度で上体を倒します。手の位置は体の前で手を組み、おへその下あたりに軽く置いてお辞儀をします」――9月13日と14日の2日間、札幌市内のスーパーで「北海道高等学校商業教育フェア」(主催、北海道高等学校長協会商業部会)が開かれた。
一般公開が始まる前の開会式では北海道網走桂陽高校のメンバーが壇上に上がり、同校商業科3年生の田中美結さんが接遇の仕方を説明、参加者全員で「いらっしゃいませ」「かしこまりました」など、あいさつの練習を繰り返した。その姿はデパートなどで見掛ける接客マナーのようだった。
同フェアは今年で10回目。昨年は胆振大震災で開くことはできなかったもの、今年は29校244人の生徒が参加。道内各地にある商業に関する学科で学ぶ高校生が地元企業と連携して開発した商品を紹介し、販売するというもの。ちなみにフェアで売り出された製品は全部で284品目だが、そのうち67品目を各校の生徒たちが開発した。
このうち帯広管内にある帯広南商業高校は「野菜彩り十勝ソーセージ」を販売。十勝産の豚肉や枝豆、ニンジン、長芋などの野菜、士幌産の牛肉など地元食材を使った逸品である。ひき肉の状態にしてから野菜を混ぜ、ケーシング(豚の腸の外皮を水洗い、塩漬けにし、ソーセージやハムの包装に使用)に充填(じゅうてん)してから乾燥、燻製、冷却の過程を経て製品化するわけだが、同校商業科の生徒が商品開発を試み、同管内の士幌高校フードシステム科が製造した。同管内にある二つの高校によるコラボ商品である。
今回初めてフェアに参加した帯広南商業高校2年の竹山虎太郎君は「地元でも人気のある商品です。札幌の皆さんにぜひとも味を堪能していただきたいです」と元気に語る。将来は農産物を食材にした商品開発の分野に進みたいという。
また、毎回フェアに参加している根室高校商業科の生徒たちが売り出していたのは「たこっちゃんつみれ」。根室産のタコとタラそして地元で人気の「はぼまい昆布しょうゆ」を使ったタコのつみれ汁である。売り場にいた同校3年生の五十嵐聖太君は「水やお湯を2~3倍に足して、味噌(みそ)を入れたら出来上がりです。大根やニンジン、豆腐などを入れればもっと美味(おい)しくなります」と商品を説明し、さらに「実は僕の家は漁師で、この商品は親父が取ったタコを使っているんです。ぜひご賞味ください」と熱っぽく語る。
一方、変わった商品を販売していたのが網走桂陽高校。蛍光灯の廃材を利用して作ったお洒落(しゃれ)なガラス製品を並べる。網走市内にある流氷硝子館と連携し、同校商業科の生徒がデザインやアイデアを持ち寄って商品化していった。「蛍光灯の廃材はいつでもどこでも出ます。そうした廃材を再利用できないか、ということで商品開発に取り組みました。とてもすてきな商品に生まれ変わったと思います」(田中さん)と笑顔で話す。
同フェア開催に向けて北海道高等学校長協会商業部会長の西村修一氏(札幌東商業高等学校長)は、「商業教育フェアは全道の高等学校の商業科に関わる生徒たちが一堂に会する場。自分たちが開発した商品を販売していくわけですが、実践を通して学ぶことは非常に多いと思います。身だしなみから言葉遣い、接客マナーを一つ一つ点検し、販売することの大変さや喜びをしっかりと体験してほしい」と語る。
地域の人口減少で高等学校の学級減や統廃合が進む中、商業高校もまたその例外ではない。それでも近年は、高等学校による地域貢献も活発になってきた。小樽市内にある小樽商業高等学校は来年度、同市内にある小樽未来創造高等学校に統廃合される。来年、小樽商業高校を卒業する佐藤絵梨衣さんは、「小樽商業高校の名前はなくなりますが、3年間、ここで学んだことは忘れません」という言葉が印象的であった。