SNSにのって、いま少女たちの運動が広がる

山田 寛

 

 少女たちが頑張っている。

 先月15日、125カ国で100万人という大学生、高校生らが「学校スト&街頭デモ」に参加した。気候変動対策促進を訴える「未来のための金曜日」運動。「今行動するか、将来(広がった海で)泳ぐか」といったプラカードがあふれた。

 運動の中心はスウェーデンの16歳の少女、グレタ・トゥーンベリである。彼女は8歳ごろから温暖化を実感してきた。昨年8月、北欧でも熱波と山火事が続き、黙っていられなくなった。

 9月の同国総選挙まで連日、その後も毎週金曜日、学校を休んで国会前に座り込んだ。それがネットで伝わり、昨年末には世界の同調デモ参加学生が2万人、今それが50倍にも膨らんだ。

 グレタは昨年末から、COP24(気候変動枠組み条約締約国会議)、ダボスの世界経済フォーラムなどで演説し、訴えた。15年に採択されたパリ協定は、世界平均気温の上昇を「産業革命前から2度未満に抑える」のが目標だが、各国の出足は鈍く、このままでは4度以上上昇かとの懸念も出ている。温暖化と闘うジャンヌ・ダルクは何歳まで頑張る必要があるだろうか。

 ナダ・アル・アフダルも16歳。内戦の続く中東イエメンで別の戦いに挑んでいる。相手は児童結婚だ。国連機関の報告では、世界では15歳未満で結婚した女性が2億5000万人。現在も途上国の少女の9人に1人は15歳未満で結婚している。

 ナダ自身、10歳の時から親に結婚を強要され、理解者の叔父の助けで家出し、短い訴えビデオをネットに投稿した。「私を物の様に売らないで」

 英訳されて3日間で700万人が視聴、世界のメディアや人権団体に波紋を広げた。その後、「ナダ基金」を設立、活動を続けている。他地域にも児童結婚と闘う少女たちがいる。だが国連機関によれば、児童結婚はなお増え続ける見込みとか。

 メラティ(17)、イサベル(16)のワイセン姉妹。プラスチック海洋ごみ汚染で世界ワースト2のインドネシア、中でもごみ銀座のバリ島で、ごみ退治の先頭に立つ。2人は12歳と10歳の時、海水浴中に大量の海洋ごみに驚き、「バイバイ・プラスチック袋」運動を始めた。州政府に訴えるハンストもし、島民へ呼び掛け、学校教材を作り、地元企業にも奨励し、山村の女性たちに代替袋作りの仕事を世話するなど、各方面に働きかけてきた。州政府も姉妹と協力、一昨年末「ごみ非常事態」を宣言した。昨年、姉妹は2万人による“バリ最大の清掃作戦”を組織し、65㌧の成果をあげた。

 英国の19歳のアミカ・ジョージ。英国でも貧乏で生理用品が買えず、生理中は学校を休む少女が少なくないが、政府は無策だった。アミカは一昨年から「無料の生理」運動を展開、同年末2000人の若者と共に首相官邸に抗議デモをかけた。英政府は急ぎ150万ポンド(約2億2000万円)の支出を決めた。アミカはその後、世界にも「生理貧困」救済の輪を広げようと運動している。

 少女は少年より問題を抱える。熱と行動力もよりあるのだろうか。この少女たちの強い味方はSNSだ。皆ユーチューブその他を通じて運動を急激に国内外へ広げた。いかつい大人より反響や共感を集めやすいだろう。

 幾つかの賞を受けたり、米誌の「最も影響力のある10代たち」に選ばれたりもしている。グレタは今年のノーベル平和賞候補に推薦された。4年前に17歳で受賞したマララに続く少女受賞者が出るかどうかはともかく、今後、様々な少女たち(少年たちもだが)の運動が一層重要な役割を担って行きそうだ。

(元嘉悦大学教授)

(敬称略)