辺野古埋め立て、沖縄県議会が県民投票条例案可決へ

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に伴う埋め立ての是非を問う県民投票の条例案が26日の県議会本会議で採決される見通しだ。ただ、石垣市議会は反対する意見案を可決するなど、市町村の足並みはそろわない。法的強制力のない県民投票に5億5000万円を拠出することの正当性も問われている。(那覇支局・豊田 剛)

石垣市議会は反対の意見書、「賛否のみ」では民意測れず

辺野古埋め立て、沖縄県議会が県民投票条例案可決へ

辺野古移設阻止を県政の柱に据えた玉城デニー知事=10月4日、沖縄県庁

 県民投票の条例案は24日の県議会米軍基地関係特別委員会採決を経て、26日の本会議で与党過半数により可決される公算が大きい。県知事が「条例公布から6カ月以内」での投票日を決めることになっている。事務手続きを考えると、3月か4月の実施が濃厚だ。

 翁長雄志前知事の遺志を引き継ぎ、「あらゆる手段を使って辺野古に新基地を造らせない」ことを公約に掲げて玉城デニー知事が新たに就任した。国と県の法廷闘争が再び始まることが確実となる中、県民投票は残されたわずかなカードの一つだ。

 「『辺野古』県民投票の会」(元山仁士郎代表)から9万2848人の有効署名に基づく直接請求を受け、県は条例案と実施に伴う経費5億5000万円の補正予算案を県議会に提出した。

 県民投票条例案をめぐり、米軍基地関係特別委員会が16日開かれたが、与野党の議論が紛糾した。照屋守之県議(自民)は「もう工事は進んでいる。なぜこの時期なのか」と指摘した上で、「最終的には司法判断に委ねられる。投票結果が司法判断を覆すことにはならない」と疑義を呈した。花城大輔県議(自民)は「5億5000万円を掛けて何を得られるのか」と問い詰めた。

 県内11市のうち、8市は保守系市長だ。保守系首長の中には賛否の二者択一を迫る県民投票に懐疑的な見方が強い。野党が修正案を提出し、「賛成」「反対」の選択肢に「やむを得ない」「どちらとも言えない」を加えて4択にするよう提案した。基地に賛成か反対かと問えば、「ほとんどの県民は反対という」(山川典二県議=自民)から、「民意を正しく反映させるために選択肢を広げることが重要だ」と主張した。

 こうした中、石垣市議会が17日、県民投票条例案に反対する意見書案を可決した。意見書案では「県民投票は埋め立ての賛否のみを問うもので、米軍普天間基地移設計画の主眼である危険性の除去について県民の意志を示すものではない」などと指摘した。これについて山川氏は県議会一般質問で、「それでも県民投票を実施する意義があるのか」と述べ、県の見解をただした。謝花喜一郎副知事は「すべての市町村が実施することが本来あるべき姿だ」と述べた一方で、池田竹州知事公室長は「条例が制定されても市町村は強制されない」との見解を示した。

 一部市町村の動きを見越して県は、県民投票条例の成立後に「県民投票推進課」を新設する方針だ。県民に投票参加を呼び掛ける広報活動をするほか、投開票事務を委託する市町村との連絡、調整を担う。約10人の職員を配置し、市町村に理解と協力を求める考えだ。


沖縄出身ジャーナリスト 仲村覚氏に聞く

辺野古埋め立て、沖縄県議会が県民投票条例案可決へ

沖縄出身ジャーナリスト 仲村覚氏

県民投票は反差別闘争の火種に

 ――県民投票運動の主体となったのは元SIELDs琉球の若者たちだ。真の狙いは何だと思うか。

 SIELDsの活動は共産党が街宣車を準備したり、そのお膳立てのもとで活動していると聞いている。おそらく、SIELDs琉球も共産党の青年部的な位置付けなのだろう。本人たちは自覚は無いかもしれないが、反差別闘争(正確には似非差別闘争)の火種づくりの役割を担っている。

 国連人権理事会で翁長雄志前知事が沖縄県民は差別されていると主張したが、県民投票はその流れの中にある。「琉球人」対「日本人」の対立構図をつくる政治イベントとして警戒すべきだ。県民投票を含めたオール沖縄のすべての活動は「琉球人差別」の機運をつくり、国連に報告する狙いがある。

 ――県民投票の委託業務に否定的な市町村もある。市町村は反対を押し切ることができるか。

辺野古埋め立て、沖縄県議会が県民投票条例案可決へ

辺野古移設阻止を求める「沖縄県民大会」で登壇した元山仁士郎氏(中央)ら元琉球SIELDsの若者ら=8月11日、那覇市の奥武山陸上競技場

 石垣市議会が県民投票に反対する意見書を可決した。これで41市町村が足並みをそろえて県民投票を行うことは不可能になった。浦添市や豊見城市など県民投票への協力姿勢を保留にしている市町村がこれに続けば歯抜けの県民投票になる。

 ――法的拘束力のない県民投票を5・5億円の予算を掛けてまですることに大義はあるのか。

 県民投票は議会制民主主義の否定である。県民投票で判断して行政を行うのだったら政治家は不要だ。何でも投票で決めれば良くなってしまう。