イラン核合意、枠組み維持しつつ脅威対処を


 イラン核合意に不満を持つトランプ米政権は、今月12日までにより厳格な内容に修正できなければ合意を離脱すると警告している。

 だが、離脱すれば中東情勢を緊迫化させる恐れがある。合意の枠組みを維持しつつイランの脅威に対処する必要がある。

12日までに是非を判断

 この合意は、2002年に発覚したイランの核開発計画をめぐり、米英独仏中露の6カ国とイランが15年7月に最終合意した行動計画。イランはウラン濃縮など核開発に絡む活動の制限を受け入れ、米欧と国連は見返りにイランに対する経済制裁を解除するというもので、16年1月に履行された。

 しかしトランプ大統領は、イランの弾道ミサイル開発制限が含まれていないと不満を示し、合意離脱も辞さないと強調。12日までに離脱の是非を判断するとしている。

 イランは、シリアのアサド政権やイエメン武装勢力への軍事支援などで中東全体を不安定化させている。特に、化学兵器を使用したアサド政権を支持する姿勢は容認し難い。「現状の核合意ではイランを抑え込むには不十分だ」(ポンペオ米国務長官)と米国が懸念することは理解できる。

 合意をめぐってはイスラエルのネタニヤフ首相が、イランが過去に核兵器の開発計画を進めていたことを示す「極秘ファイル」だとする資料を公開。トランプ氏に離脱を求めた。これに対し国際原子力機関(IAEA)は、イランで09年以降、核開発の「確たる兆候」は見られないとの従来の調査結果に基づく声明を発表している。

 核合意が一定の歯止めとなってきたことは否定できない。核合意が崩壊すれば、イランは反発して核開発を再開するとみられている。そうなれば、中東情勢が一段と緊張することは避けられない。

 サウジアラビアは「イランが核兵器を持てば、われわれも直ちに追随する」(ムハンマド皇太子)と述べている。米国は核合意からの離脱を慎重に検討しなければならない。

 もちろん、核合意には見直しの余地があろう。イランのロウハニ大統領は「核合意やそれを口実とした他の問題については、いかなる交渉の余地もない」と強調し、ミサイル開発など、核合意に明記された項目以外の規制は「受け入れられない」と述べている。だが、国際社会の懸念の声に耳を傾けるべきだ。

 欧州は、イランによる核開発阻止のためには核合意の堅持が必要との見解だ。一方、フランスのマクロン大統領やドイツのメルケル首相は、核合意に関するトランプ政権の懸念に一定の理解を示している。

欧州はトランプ氏説得を

 マクロン氏は先月、米ホワイトハウスで開かれた米仏首脳会談で、イランの核開発を25年まで抑止できる現在の核合意に「25年以降の核開発、弾道ミサイル計画、地域諸国への(イランの)影響力行使の3本柱(に関する合意)を加えなければならない」と説明した。

 欧州主要国は、米国の合意残留に向けてトランプ氏を説得する必要がある。