こどもの日 子供時代受ける愛は生涯の宝


 きょうは「こどもの日」。「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝」することを趣旨にした祝日である。男子の健やかな成長を願う端午の節句でもある。

少子化が急激に進展

 端午の節句にはこいのぼりを上げるが、最近は少なくなった。それは、住宅事情から難しい都市部だけでなく、地方でもそうである。子供のいる家庭が少なくなったのだ。

 総務省がこどもの日に合わせて発表した15歳未満の子供の推計人口は、前年より17万人少ない1553万人。1950年以降で過去最少を更新した。

 少子化の急激な進展は、明らかに社会から活気を奪っている。背景には「非婚化・晩婚化」がある。社会的経済的な環境だけでなく、日本人の人生観や価値観の変化に起因する面が少なくないように思われる。

 最近はなぜか「子宝」という言葉があまり使われなくなった。子供を産み育てるより、自分の人生を楽しむという傾向があり、また結婚したくてもできない若者が増えている。

 男女が出会って結婚し、子供をもうけ、その子供たちが成長してまた男女の出会いを持つ。そして愛と生命のバトンが繋がれていく。この当たり前のことの中に、深い神秘があり、人間の幸福の基本がある。少子高齢化の深刻化によって、日本人はそのことに改めて気づき始めたのではないか。

 ベストセラーとなった渡辺京二著『逝きし世の面影』は、幕末維新の頃に来日した多くの外国人たちが、日本の家族や親子を見て、日本人ほど子供を可愛がる人々を見たことがないと感心していることを浮き彫りにしている。そういう伝統がなぜ揺らいできたのか、考えてみる必要があるだろう。

 子供時代は、その後の人生の土台をつくる重要な時期である。それは健康面や学力面はもちろん、人格的形成、さらには人間観や世界観の基礎となる。人生そして世界に対して肯定的で前向きになれるか否かは、子供の時期、どれだけ親や周りの人間から愛を受け、それを感じ取ったかにかかってくる。

 もちろん青年期になってからの努力やさまざまな人生経験、人との出会いが人生を左右するし、困難や挫折も味わうだろう。しかし、愛情豊かな親に育てられた人は困難を強く正しく乗り越えられる。子供時代に受ける愛情は生涯の宝である。いろいろな社会的事件のニュースを聞くにつけ、心を痛めるのは、不幸にして親から十分に愛されなかった子供たちのことである。

 経済成長やテクノロジーなどによる社会の発展にもかかわらず、子供たちをめぐる環境は難しい課題を抱えている。かつては考えられなかった「子供の貧困」が大きな問題となっている。統計によると子供の7人に1人が貧困状態にあると言われる。

不足は社会で補うべきだ

 背景には母子家庭などひとり親家庭の増加とそれに対する社会的な対応の遅れがある。ひとり親家庭が増えることを前提とした考えは首肯し難いが、子供たちには無限の可能性を持った未来がある。愛情の不足は社会や周囲で補う必要がある.