米空母カールビンソン「航行の自由」作戦へ

 米国防総省は、南シナ海に空母カールビンソンを派遣し、中国に対する圧力を強めている。20日にフィリピン寄港を終え、中国が周辺国と領有を争い、軍事基地化を進める海域付近での活動を再開する。今後、この海域で「航行の自由作戦」を実施し、来月にはベトナムのダナンに寄港する見込みだ。

南シナ海で対中圧力を強化

ビル・ガーツ

 米国防総省は、南シナ海に空母カールビンソンを派遣し、中国に対する圧力を強めている。20日にフィリピン寄港を終え、中国が周辺国と領有を争い、軍事基地化を進める海域付近での活動を再開する。今後、この海域で「航行の自由作戦」を実施し、来月にはベトナムのダナンに寄港する見込みだ。

 米海軍当局者は、南シナ海でのカールビンソンの活動について「この海域が中国のものではないことをはっきりと伝えるためだ」と、南シナ海の軍事化を進める中国を牽制(けんせい)した。

 米中の艦艇をめぐっては先月、この海域で小競り合いが発生したばかり。中国国防省は、中国艦艇が航行の自由作戦を行っていた米駆逐艦ホッパーを南シナ海から排除したと主張したが、米国防総省はこれを否定した。

 カールビンソンは1月、新しい海軍の指揮体制「第3艦隊フォワード」で南シナ海での行動を開始した。

カールビンソン

19日、フィリピン・マニラ沖に停泊する米空母カールビンソン(米海軍提供)

 米西海岸とアラスカに拠点を置く第3艦隊は、日付変更線を超えると、自動的に日本を拠点とする第7艦隊の指揮下に入るよう決められていたが、第3艦隊フォワードでは、第3艦隊の指揮下のまま西太平洋で活動することが可能になっている。

 海軍当局者は「この新たな第3艦隊フォワードによって、第3艦隊の艦船、空母の活動範囲は日付変更線を超えて、西太平洋にまで拡大された。第7艦隊は依然、『直ちに戦える』任務を負い、第3艦隊はプレゼンスを示す任務を負う」と指摘。この新体制によって「競合国に圧力をかけながら、同盟国の安全を守るという二つのことにそれぞれが集中できる」と新体制の利点を強調した。

 マティス国防長官は先週、「南シナ海の環礁や島々を前進基地へと変えることで、明らかに米国と競合関係が生まれている」と主張。米国の防衛戦略をテロ対策から中露への対応へとシフトしたのは、中国の南シナ海の軍事化が一因であることを示唆した。

 中国は今のところ、カールビンソンの西太平洋派遣を直接的には非難していない。

 しかし、中国共産党系の新聞、環球時報は「トランプ政権は中国が競合国として台頭していることに不安を抱き、南シナ海などで問題をつくり出すことで中国に圧力をかけようとしている」(中国社会科学院・米国研究所の劉衛東研究員)と、米国を牽制する中国軍専門家の発言を報じた。

 ティム・ホーキンス少佐は先週、カールビンソン艦上で記者らに対し「国際法は米国がここで活動し、飛行し、訓練を行い、航行することを認めている」と作戦の継続を明確にした。