ウイグルに支援を 中国で著しい人権弾圧
民族文化消す同化政策
2月9日、日本ウイグル連盟と呉竹会の共同開催で、世界ウイグル民族指導者のラビヤ・カディールさんの講演会が都内で開催された。ラビヤ・カディールさんは、世界中のウイグル人から指導者として尊敬されている。中国共産党が一党独裁支配する中国は、習近平主席が、一帯一路構想を推し進め強権政治を行っている。ウイグル問題を、考えてみたい。
20世紀前半に、テュルク系イスラム教徒らが、現在中国の新疆ウイグル自治区と呼ばれている地域に、東トルキスタン共和国を建国した。しかし、中国は1949年、人民解放軍で武力弾圧し中国共産党支配下に編入した。その後、主に海外を中心に東トルキスタン共和国の独立や民族の権利を求めるウイグル人が活動している。彼らは、平和的な手段で活動を行っていて、テロリズムとは無縁である。中国政府のいくつかの発表にかかわらず、ウイグル団体がテロ活動を行ったとの確証はない。
中国政府に対してウイグル人の抗議活動も行われ、死者を伴う事件がたびたび起きている。政治的中立を標榜(ひょうぼう)している、世界最大の人権団体であるアムネスティ・インターナショナルも、中国政府によるウイグル人弾圧を非難している。
1990年、バリン郷事件が起き、入植した漢民族の追放、新疆省での核実験や産児制限への反対、自治の拡大を求めてデモが行われ、アムネスティは、死者50人、6000人が「反革命罪」で訴追されたと報告している。1997年、グルジャ事件(イニン事件)が起きた。カザフスタンの東トルキスタン統一革命民族戦線は、漢族住民55人、ウイグル人20人が死亡したと発表した。中国は、デモの指導者ら3人を処刑した。
2009年にはウルムチで大規模なデモが行われ、世界ウイグル会議は、ウイグル人1500人が射殺され、1万人のウイグル人が行方不明になったと訴えた。その後も、平和的なデモなどが弾圧され、多数のウイグル人が虐殺されたなどの事件が続いているが、情報封鎖が行われ、正確な情報は外部に伝わらない。
背景には、中国政府の同化政策もある。漢民族の移動、漢文化の流入などにより、ウイグル人の間に自分たちの文化が消されるとの危惧が広がっている。また、企業の経営者や幹部が中国人で、中国語ができなければ職がない。ウイグル人の間に失業率が高まれば、抗議活動に参加するウイグル人も増える。
ウイグル人の若い女性は、いまだ中国に残っている「共産主義の大義のため」の強制移住政策により、北京や上海などに集団で強制的に移動させられる。そうなると、若いウイグル人男性の間に退廃文化が広がりかねない。世界中に存在するウイグル人コミュニティーがウイグル民族の将来を心配している。
国際機関が弾圧を報告
中国政府による宗教弾圧も行われている。中国政府は宗教を管理し、モスクへの出入りを制限したりしている。アメリカ国務省が毎年公表している、国別の人権報告書、宗教の自由に関する報告書、あるいは、アムネスティや国境なき人権などの国際的な人権団体の報告書に詳しい。
人権問題の象徴となっているのはイリハム・トフティさんである。彼は、経済学者でウイグルの歴史などを研究していただけであったが、国家分裂罪で起訴され無期懲役の刑を受けた。日本政府としても、ウイグル人団体に対する支援が求められる。