沖縄県議会、ヘリパッド使用禁止を求める決議

米軍ヘリの事故に抗議、「辺野古移設反対」は盛り込まず

沖縄県議会、ヘリパッド使用禁止を求める決議

 米軍の大型輸送ヘリコプターCH53Eが11日夕、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先である名護市辺野古から北東に約40㌔離れた東村高江の民間牧草地に緊急着陸し炎上した。沖縄県議会は16日、事故に抗議し、高江周辺にあるヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)6カ所の使用禁止を求める決議を全会一致で可決した。ただ与党が求めた「海兵隊撤退」などの過激な文言は野党自民党の反対で挿入されなかった。(那覇支局・豊田 剛)

野党自民党が反対、選挙への影響を懸念

宜野湾市民にも衝撃「一日も早い移設を」

沖縄県議会、ヘリパッド使用禁止を求める決議

緊急着陸し炎上した米軍大型輸送ヘリCH53E=沖縄県東村高江

 東村在住の依田啓示さん(43)は事故の瞬間を目撃した数少ない一人だ。午後5時35分ごろ、東村高江の海岸に修学旅行の高校生4人を車に乗せ民宿に戻る途中だった。

 「海の方からCH53が見え、そのまま150㍍近い断崖を急上昇し、ヘリパッドに着陸する訓練をしているようだった。特に異常があるようには見えなかった」

 しかしその直後、機体の一部から火が上がっているのが見えて、事故が起きたと認識。不時着した際の音は聞こえなかったという。

 現場は牧草地の中央部で、約300㍍の所に民家が3軒ほどある。

 在沖米海兵隊の発表によると「飛行中に火災が発生し緊急着陸した」。在沖縄米軍トップのニコルソン中将は 運用停止期間は同日朝から96時間とし、この間に事故調査を行い、すべての同型機体の安全確認をするよう指示した。96時間が過ぎた16日現在、飛行は確認されていない。

 海兵隊の報道発表では、「原因を特定するため、乗員や整備の専門家と緊密に協力し、徹底的な調査を行う」とし、牧草地所有者には損害分を賠償するとした。また、乗組員の避難や消防署への通報、消火活動に協力した地域住民に謝意を述べた。

 事故の一部始終を知る依田さんは、メディアの事故報道に違和感を抱き、地域への風評被害を心配している。

 「地元紙は号外の写真に高校生がSNS投稿した画像を無断使用した。この高校生はメディアの取材攻勢に恐怖を感じて、自身のアカウントを削除、取材も断っている」と説明する。

 さらに、地元メディアは「修学旅行で東村の農家に民泊をしていたということまで垂れ流した。そのため、地元観光協会に、事故発生リスクを心配した旅行社から多数の問い合わせがあり、職員が対応に追われている」という。

 事故現場周辺ではメディアや活動家が集まり、交通渋滞が発生。地域住民の日常生活に支障を来している。

 事故は普天間飛行場を抱える宜野湾市民にとっても衝撃だった。「宜野湾市民の安全な生活を守る会」の平安座唯雄会長(72)は、「もしも普天間飛行場の周辺に落ちていたら大惨事になった」と心穏やかでない。「だからこそ一日も早く辺野古に移設しなければならない」と主張。反対のスローガンだけでは解決できないと指摘し、実効性ある危険性除去と負担軽減を求めた。

 衆院選公示翌日の事故ということで、選挙への影響も避けられない。自民党の選対本部では、事故の速報をニュースで知ると「どうして、こうも選挙の時になると米軍の事件事故が起きるのか」との声が漏れ聞こえた。

 参院選前の昨年4月、米軍属の男がうるま市在住の女性を殺害、遺体を遺棄した事件の悪夢が脳裏をよぎる。この事件で、落選した島尻安伊子・沖縄担当相の選挙に影響した。

 11日に選挙応援のために沖縄入りしていた自民党の岸田文雄政調会長は事故を受け、12日の予定をキャンセル。県議会は16日、事故への抗議決議・意見書両案を全会一致で可決した。その案の中に革新系与党は「海兵隊撤退、辺野古移設反対、北部訓練場のヘリパッド撤去」を盛り込もうとしたが、自民が反対。「ヘリパッドの使用禁止」に加え、「民間地や水源地上空での飛行訓練中止」という表現に収まった。ヘリパッド建設は北部訓練場の一部返還の条件だったため、「撤去」は不適切と判断された。

 自民党県連幹部は「早く収束しそうなのが不幸中の幸い」と話す。残り数日でどれだけ事故の影響を抑えられるか。

 前回は翁長氏を支える「オール沖縄」候補が沖縄4選挙区すべてで当選した。「最低でも二つは取らなければいけない」と自民関係者は陣営幹部に発破を掛けていた。