自衛隊と政治の責任

 本紙6月17日付に、時事通信社が実施した世論調査の結果が掲載されていたが、私が注目したのは、「憲法第9条に自衛隊の存在を規定する条文を新たに追加することの是非」についての回答だ。

 賛成が52・0%、反対が35・1%。この結果からも、半数以上の国民が自衛隊の存在を明記する憲法改正を支持していることがうかがえる。

 だが、「改憲議論に期限を切ること」の是非については、「期限を区切らずじっくり議論するべきだ」が70・3%、「期限を区切ってでも議論を急ぐべきだ」が19・4%となった。7割を超える人が「期限を区切るべきではない」と回答しているが、質問する際の説明内容によっては、「期限を区切ってでも議論を急ぐべきだ」と回答する人の数字は増えたと思うのだが・・・。

 一方、安倍晋三首相が5月3日に改憲目標のスケジュールを発表して以降、野党やマスコミの多くが、安倍首相の改憲スタンスを批判しているが、お門違いも甚だしい。批判するのは簡単なことだ。いつまでも自衛隊の存在を曖昧にする政治の態度の方が、無責任そのものではないのか。

 憲法と自衛隊との関係は、自衛隊の発足当時からたびたび国会で議論されてきた。その中でも自衛隊初の海外派遣が議論された湾岸戦争のときが、もっとも激しい議論が展開されたと記憶している読者も多いだろう。

 その後、日本では国連平和維持活動(PKO)協力法が成立し、現在までに国際平和協力業務は27回実施され、このうち自衛隊のPKO活動(人道支援活動を含む)は14回に上る。この間、延べ1万人以上の自衛官が海外に派遣され、派遣先の国々から自衛隊の活動は高い評価を得ている。国内においても、自衛隊の災害派遣での活躍は、国民から評価されているのは周知の通りである。

また、昨年の安保法制の成立により、自衛隊の活動はさらに拡大しており、自衛隊の存在をこのまま曖昧な状態に放置することは、政治の責任として絶対に許されることではないと、私は思う。

(濱口和久)