金城徹・那覇市議会議長に辞職勧告「独善的で非民主的議会運営」
自民・公明など賛成多数で可決 共産だけ擁護
沖縄県那覇市議会の金城徹議長に対する辞職勧告決議が19日、自民、公明両党などの賛成多数で可決された。金城氏は翁長雄志知事の側近で、知事を支える「オール沖縄」勢力のうち、県内の市町村議会で唯一の保守系議員会派「新風会」の中心的メンバーだ。知事派の保守系の一角が崩れれば、県政の求心力は低下する一方、革新色が一層強まることが予想される。(那覇支局・豊田 剛)
背景に新風会への不信/革新色一層強まる「オール沖縄」
辞職勧告決議は賛成19で、反対の14を上回った。戦後の那覇市議会の歴史の中で、辞職勧告が出されたのは初めて。
同決議に反対討論したのは共産党のみ。湧川朝渉議員は、辞職要求は「数の原理を盾にした政治的争い」と述べ、日ごろ主張している「民意」を反故(ほご)にした。また、身内である新風会からは誰も発言しなかった。
一方、自民、公明の両会派に加え、なはの翼無所属G(以下、なはの翼)、無所属の会から次々と賛成意見が出た。
決議案が可決された後、「議長の下では続けられない」として18人が退席。定足数を欠き、流会となった。
決議の後、金城氏は、「理不尽な決議だ。辞職する考えはない」と述べ、決議に従わない考えを示した。那覇市議会条例には議長の辞職に関する規定がないため、辞職勧告には強制力はない。
議長に対する動議が初めて出されたのは6月17日。「議会内政局優先で自主性に欠け偏った判断をする金城徹議長の下では公平・公正な議会運営と議会改革が期待できない」という趣旨で不信任決議案が提出され、賛成多数で可決された。
不信任決議案が出された理由は、①臨時会の開議請求から開催まで7日間を空けるというルールを破った②市文化財課の不祥事の報告を受けたにもかかわらず、各会派および議員に共有しなかった③定例会中の市長の海外出張を各会派および議員に報告しなかった④公務外使用など公用車の使用形態に疑いがある――など6項目。
続く同29日の6月定例会最終本会議では、「独善的で非民主的な議会運営のあり方を糾弾する抗議決議案」を賛成多数で可決した。提案理由は「自らの非を認めず、独善的で非民主的な議会運営を行い、金城徹議長の下では健全な議会運営が望めない」というもの。決議が可決された後、自公会派などから18人は議場を退席したにもかかわらず、金城氏は残りの議員で議案審議を進めた。臨時会の直前には、議長選の出直し選挙も提案されたが、金城氏は断ったという。
議長が信を失った背景には翁長県政と一体となった「新風会」に対する不信がある。同会の所属議員は2013年の改選当時は12人だったが現在は議長を除いて4人に減った。
14年の議長選では、新風会は金城氏に候補者を一本化したが、当時新風会の屋良栄作議員(なはの翼)が対立候補として立候補した。市議38人の票が同数となり、くじ引きで金城氏に決まった。その直前に、屋良氏は脱会。4月には同氏が中心になって新風会の保守派と民主会派らが合同で新会派を結成した。
新風会の凋落(ちょうらく)を決定的にしたのは6月5日の県議選だ。新風会から仲松寛、山城誠司の両市議が出馬したが、共に落選。その翌日には会長の知念博議員が新風会を離脱した。
辞職勧告案を提出したのはその知念氏だ。知念氏は議長任期を金城議長と分け合うことで暗黙の了解を得ていたとされるが、金城氏が譲らなかったため決裂した。
「新風会は保守系の支持者から見放されることが決定的になった。ましてや、革新系が彼らに入れる理由はない」と保守系市議は冷ややかに分析する。別の中立系市議は、「安慶田光男副知事、久高将光副市長といい、元新風会系市議が先に出世した。ライバル心と上昇志向が強いせいで、完全に市民目線を失った」と批判する。
9月議会定例会は9月7日に始まる。金城氏は8月25日から9月6日の日程でペルーと南米に出張している。世界のウチナーンチュ大会の参加要請や姉妹都市のブラジル・サンビセンテ市の名誉市民を授与されることが目的だ。
保守系市議は「議長からは議会の正常化を図ろうとする意志はまったく感じられない」とあきれ顔。9月議会は波乱の幕開けとなりそうだ。