女性暴行殺人事件の抗議集会、革新主導で「海兵隊撤退」決議
自公、大半の首長は不参加
女性暴行殺人事件で元米海兵隊員の男が逮捕されたことを受けて、大規模な抗議集会が19日、那覇市で開催されたが、抗議決議では、沖縄からの海兵隊撤退が盛り込まれた。自身は米軍基地容認で、「保革を超えて県民の心を一つに」と主張する翁長雄志知事が、左派陣営に大きく譲歩した形となった。(那覇支局・豊田 剛)
目立つSEALDs 一層強まる政治色
炎天下、那覇市の運動場で開かれた大会では、犠牲者を追悼するため、多くの人が黒色の衣服を着用して参加した。
決議では「繰り返される米軍人・軍属による事件や事故に対し、県民の怒りと悲しみは限界を超えた」とし、米軍・軍属による犯罪防止のためには基地をなくすべきだと主張。その上で、「県民の人権と命を守るためには、米軍基地の大幅な整理、縮小、なかでも海兵隊の撤退は急務である」と明記した。
翁長氏は、日米首脳会談で安倍晋三首相が日米地位協定の見直しに言及せず、「辺野古移設が唯一の解決策であるとおっしゃっている」と厳しく批判。その上で、「海兵隊の撤退・削減を含む基地の整理縮小に取り組んでいく不退転の決意」を表明。「ぐすーよー、まきてぃないびらんどー(皆さん、負けるわけにはいきませんよ)」と沖縄方言で呼び掛けた。
大会後、翁長氏は記者団の前で海兵隊撤退の立場かどうか問われると、「ぎりぎりの発言をしている。私の立場は普天間基地の県外移設、『辺野古新基地』はつくらせない、オスプレイの配備撤回だ」と海兵隊撤退についての明言は避けた。
大会は翁長知事支持派の革新政党、労組、市民団体でつくる「オール沖縄会議」が主催した。決議では「海兵隊撤退」が盛り込まれ、反政府、反米思想が強くなったことで、自民、公明、おおさか維新の会が不参加。県内にある11市のうち9人の市長が参加を見送った。
沖縄選出の宮﨑政久衆院議員(自民)は、「地位協定の改正など、物事を交渉するには相手との信頼関係がなければならない」と主張、反対するだけでは何も解決できないことを指摘した。ある市長は「正式な参加要請はなく、簡易なFAXが送られてきただけだった」と述べた上で、「従来の枠組みの革新の集会にすぎず、参加する理由がない」と、別の公務を入れた。
おおさか維新の会の幹部は、「超党派で全首長が参加できるようなものでなければ『県民大会』とは呼べない」と冷ややかな見方をした。
大会の政治色は、若者の顔触れで一層際立った。
共同代表の一人で、若者を代表して発言したのは、学生グループ「SEALDs(シールズ)琉球」の玉城愛さんだ。大学4年生の玉城さんは、「軍隊の本質は人間の命を奪うことだと、大学で学んだ」と言う。「安倍晋三さん、日本本土にお住まいの皆さん、事件の第二の加害者はあなたたちです」と訴えた。
続いて、シールズ琉球代表の元山仁士郎さんは現役大学生のメンバー3人を率いて登壇。「一番の脅威は私たち隣人を襲う米兵の存在ではないでしょうか」と訴えた。学生らのメッセージは米国を敵対視するものばかりだった。
大会の冒頭だけは、被害者への哀悼の意が示された。1分間の黙祷(もくとう)に続き、「被害者の無念は、計り知れない悲しみ、苦しみ、怒りとなっていくのです」という犠牲者の父親のメッセージが読み上げられた。
当日は、被害者の女性の名護市実家で四十九日法要が行われた。「そっとしてほしい」という親族の願いに反しての大会強行に、ある那覇市議は「政治利用とみられても仕方ない」と述べた。
大会の開始前には全国から参加した労組、市民団体、自治体ののぼり旗が数百本掲げられていた。中でも、ひときわ目立っていたのは、「琉球独立」と書かれた沖縄独立派の大きな旗、さらには、「全基地撤去!安保破棄!」と書かれた琉球大学と沖縄国際大学自治体の横断幕だ。こうした光景は今回の事件に抗議する「県民大会」に似つかわしくないものだが、注意する人は誰もいなかった。
また、会場に向かう途中で、琉球新報と沖縄タイムスの大会特集号、さらには、革マル、中核派、大学自治会による米軍撤退のメッセージビラが配布された。
純粋に犠牲者の追悼目的で参加したという那覇市在住の20代の女性は、「思っていたのと違う」と、過激なメッセージに困惑している様子だった。
会場の奥武山公園には沖縄県護国神社などの寺社、遊具、さらには、複合スポーツ施設がある。園内の野球場ではこの日、夏の高校野球の県予選が予定されていたが、大会に遠慮して会場を変更した経緯がある。












