米大統領選、政治不信一掃する論戦を
今年は4年に一度の米大統領選が行われる。超大国米国を導く大統領は世界のリーダーになることが宿命であり、日本にとっては最も親密な関係を維持すべき国の指導者の選出だけに、否が応でも注目が集まる。
候補者鍛えるプロセス
民主党と共和党は党の候補者選びを2月初旬から開始する。全米各州での予備選・党員集会を経て両党が7月に開催する全国党大会で、それぞれの大統領・副大統領候補が決まる。10月には大統領候補による公開討論会が通常3回行われ、11月8日の投票日を迎える。長くて熱いマラソンレースが始まった。
各種世論調査の平均値では、民主党はクリントン前国務長官がトップ、最有力候補とみられている。一方、混戦が続く共和党は不動産王のトランプ氏がトップ、保守強硬派として知られるクルーズ上院議員、若手のホープとされるルビオ上院議員が続いている。クルーズ、ルビオ両議員は共にキューバ移民の息子で、初のヒスパニック系大統領を目指す。いずれの候補者が党の指名を獲得し、当選するにしても、マラソンレースの選挙戦を通過しなければならない。
そんなに長い選挙戦が必要なのか、という考えも一部にはある。だが予備選は、国民が徐々に関心を高める中、両党内の議論を活発化させ、収斂(しゅうれん)させるプロセスであり、一方で候補者を鍛えるためのものでもある。一国のリーダーを選ぶにあたり、民主主義国家米国はプロセスを重視する。この点をわれわれは理解する必要があろう。
候補者たちの論戦を通じて支持率が大きく変動し、選挙資金の集金額も時間の経過とともに差が出てくる。当初共和党の最有力候補とみられていたブッシュ元フロリダ州知事は、優れたディベート能力を示すことができず、豊富だとされた資金が底を突き、支持率も低下。存在感は乏しくなっている。父親と兄がホワイトハウス入りしたブッシュ家ブランドだけでは、もはや選挙を戦えない。
民主党は、クリントン前国務長官が早い段階で党の正式候補になる可能性が高いとされる。大統領夫人、上院議員、国務長官と半世紀に近い経験と実績は申し分ない。しかし、政治不信が際立つ今の米国では、初の女性大統領誕生への期待が膨らむ中、政府での要職経験は必ずしも大きな資産にはならない。国務長官在任中に私用のメールアドレスを公務に使っていたことなど、国民の不信感を完全に拭えたとは言えない。
共和党では、トランプ氏が勢いを維持し続けるのかが注目の的である。不法移民排除を声高に訴え、イスラム教徒の入国禁止など物議を醸す発言にもかかわらず、支持率は昨年末になってむしろ上昇している。政治経験のないトランプ氏には、演説で主張した政策をどう実現するのか、今後は具体的提示が強く求められる。
国民の不満に応えよ
大統領選挙は8年ぶりに新人同士の争いとなる。オバマ大統領と議会の鋭い対立で、政治システムが十分に機能を発揮していないことへの国民の不満は強い。各候補者がこれにどう応えるか、その姿勢が問われる。
(1月10日付社説)