海外情勢に左右される日本示す新潮の「最悪シナリオ2016」
◆「爆買い」消える予想
なんとなく持ちこたえた感のある2015年だったが、来年はいよいよ様々なところで取り繕ってきたものが綻びだしそうな予感がする。週刊新潮(12月31日、1月7日新年特大号)が「日本列島が蒼ざめる『最悪シナリオ』2016」を特集した。
最初の記事「爆買い中国人が街角から一斉に消える」では、日本に来て猛烈な買い物をしている中国人が“一斉”にいなくなるという予測だ。はやり廃りがあるのは世の習いだから、いずれ中国人の消費スタイルも変化して、爆買いも次第になくなっていくだろうとは、誰でも予想できる。
しかし同誌は“一斉”と言い切るのだ。「シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト、田代秀敏氏」が同誌に語る。「中国政府は2016年1月から、『銀聯カード』による外貨引き出し上限を1枚当たり年間10万元(約190万円)に設定したところ。さらに国内消費を促すため、“銀聯カードの所有枚数を制限するぞ”と踏み込んだ施策を採れば、爆買いはパタッと止むでしょう」というのだ。
本当にそんな極端なことが起こるのか。田代氏の予想を補強する内容はこれ以上記事中にはない。だが、この前提で同誌は続け、「急に観光客がゼロになったなら、『1997年から98年にかけてのアジア通貨危機、あるいは08年のリーマンショックに比肩する難局に追い込まれかねない』(同)」と煽(あお)る。
「日本経済は爆買いなしには立ち行かないというのが国際的コンセンサス」とまで田代氏は同誌に語っているが、どうも話が大げさ過ぎるし極端だ。来年の「春節」(旧正月=2016年は2月8日)も変わらず銀座や新宿に中国人客が溢(あふ)れていたら、どう説明するのか。
爆買いは経済成長の過程で様々な歪(ゆが)みに晒(さら)されている中国人たちのストレス解消にもなっている。中国政府がカード制限をしたら、国民の間に不満が溜(た)まっていくと思うのだが。いずれにしても、中国の政策が日本に大きな影響を与えるということだ。
◆梯子外される可能性
次の記事「沖縄で独立運動が燃えさかる」は、これが県民の支持を得て大勢になっていくかは別にしても、看過できない動きだ。法的に沖縄独立が無理でも、政府や本土との心理的離間工作としてはじわじわ効いて来そうだからである。
「TPPからアメリカが突如の離脱」は「外務省の関係者」の話を根拠にしている。米議会が環太平洋連携協定(TPP)を承認しないだろうとの予測で、「次期候補のクリントン、トランプも反対を表明している」と述べる。
確かに同じような予測をする専門家は多い。大統領選挙と相まって、内向きになっている米政界が離脱を表明し、日本が梯子(はしご)を外される可能性は否定できないのだ。だからといって、日本や他のメンバー国がそれを黙って見ているのか、その辺りも書き込んでほしかった。
このほか、「まさかの『トランプ大統領』誕生」「『金正恩』が病に倒れて北朝鮮の政権転覆」「『慰安婦』再燃し『朴槿恵』が竹島へ」などの記事が続く。ここで見えてくるのは、わが国は米国、中国、朝鮮半島の情勢に左右されやすい、ということだ。「最悪のシナリオ」は常に外からやって来るのか?
◆「ISに日本人」指摘
同特集の中で、「ISの日本語ビデオと伊勢志摩サミット」の記事がある。「IS(『イスラム国』)内に日本人がいるのではないかと囁かれて」いると、「軍事ジャーナリストの世良光弘氏」が指摘している。
これと関連して、週刊文春(12月31日、1月7日新年特大号)が「日本に『イスラム国』のメンバー2名が潜伏している!」と報じた。特ダネだ。すでにそのうち1人はフランス人で、「氏名、国籍のみならず、身長、容貌、身体つき、身体的特徴、顔の傷、さらには訛りに至るまで詳細な『人着』情報を得ている」という。
伊勢志摩サミット、東京五輪等を控えている日本で、テロへの警戒体制構築が現実のものとなっているのだが、同誌は、「危機感を官邸全体が共有しているようには見えない。欧米各国に漂う壮絶なまでの緊迫感は皆無だ」と焦る。
ISの日本人メンバー、国内侵入したIS。新年は何かと身構えなければならない年になりそうだ。
(岩崎 哲)





