「大学コンソーシアム沖縄」が始動

学術、産業、行政はレベルアップを

 一般社団法人「大学コンソーシアム沖縄」が昨年秋、誕生した。沖縄県内のすべての高等教育機関が協定を結び、単位互換や教員の交流、社会人向けの講座などを行い、大学のみならず企業や行政のレベルアップを図る。大学と産業界、社会との連携がコンソーシアム成功のかぎを握る。(那覇支局・豊田 剛)

稲嶺元知事、記念シンポで講演

「大学コンソーシアム沖縄」が始動

大学コンソーシアム沖縄設立記念シンポジウム=12月23日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター会議室

 沖縄県内にある大学や短期大学が研究や教育など幅広い分野で連携を図る「大学コンソーシアム沖縄」(瀬名波榮喜代表理事=名桜大学元学長)の設立記念総会が昨年10月24日、恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)で開かれた。コンソーシアムとは、二つ以上の団体が共通目標に向け作業する組織。これまで、全国で大学コンソーシアムがないのは沖縄を含めて6県だけだった。世界トップレベルの学術研究を目指すOISTの開学が、コンソーシアム誕生の機運を高めた。

 大学コンソーシアム沖縄の構成機関は、OIST、琉球大、名桜大、県立芸術大学、県立看護大学、沖縄国際大、沖縄大、沖縄キリスト教学院大・短大、沖縄女子短大、沖縄工業高等専門学校。

 12月23日に行われた記念シンポジウムでは、OIST誘致に携わった稲嶺恵一元知事が沖縄の高等教育の歴史、大学コンソーシアムの重要性と課題について講演した。以下は講演の要旨。

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「大学コンソーシアム沖縄」が始動

基調講演する稲嶺恵一元沖縄県知事

 沖縄には11の大学・機関があり、それぞれ特色、独特の理念を持っている。3本の矢のみならず11本の矢は大変強固なものになる。

 沖縄の高等教育を振り返ってみる。戦前、沖縄には高等教育機関がなかったが、戦後、マッカーサー米司令長官などによる話し合いで琉球大学が1951年に開学した。続いて、実業家が56年、現在の沖縄大学、沖縄女子短大の母体である嘉数学園を設立。それより先に誕生した沖縄国際大学との統合が求められたが、否決され現在に至っている。

 また、キリスト教の教育機関が必要という声があがり、沖縄キリスト教学院大学・短大が生まれた。西銘順治元知事(78年~90年)は沖縄県立芸術大学の設置に尽力。文部省は当時、ローカルなものだけを学ぶことを認めなかったが、後に沖縄らしい内容を盛り込ませた。

 北部にも大学が必要という観点から名桜大学(94年)、さらには看護のレベルアップの必要性から沖縄県立看護大学(98年)が開学した。また、理工系の高等教育機関が琉球大学しかないという理由で沖縄工業高等専門学校(高専)が2004年に誕生した。そして、OISTが12年に開学した。

 沖縄は昔から、太平洋の軍事上のキーストーン(要石)とされた。しかし、かなり前から、経済、文化、学術面でもキーストーンになるべきだと言われていた。最近の大きな動きは、全日空が主体となる那覇空港のハブ構想。OISTの生みの親である尾身幸次氏(元科学技術担当相)は「これからの日本は、科学技術で振興させなければならない。そのためには立派な大学を作らなければならない」と述べた。国際都市がOISTのある恩納村に形成されていて学術的キーストーンの中心をなすであろう。

 コンソーシアムに期待することは、学術機関同士の提携(学学連携)、産業界との提携、社会・社会人との提携だ。

 学学連携では、沖縄女子短大は保育研究における育児用品の開発で高専の技術力とタイアップすれば良い物が生まれると期待しているという。OISTのドーファン学長は、社会とつながることで価値が広がるとの認識からコンソーシアムによる他大学との連携を重視しているという。また、小中高とのいろいろな形での11の機関の連携、単位交換、学位交流、教員研修も願われている。

 産学連携では、産業界からの注文が多い。これからの時代は人材育成だと口をそろえて言う。通関、税制、法務、海外ビジネス知識、語学などの分野でのニーズが高い。しかし、卒業生に見合ったレベルの就職先が少なく、学校側から産業界に対する要望が強い。学術だけでなく、産業界が高度人材を受け入れるだけの素地がなければならなく、レベルアップが必要だ。大学や産業界だけでなく県民の一人ひとりが考えることで全体のレベルアップにつながっていく。

 また、社会人になってから教育を受けたいという要望が強くなっている。公開講座や離島地域のための遠隔教育、生涯学習などの実施が求められる。国際化社会の時代になったが、最近の若者は海外に行きたがらない。コンソーシアムでは外国との交流、留学生受け入れ、さらには学生を海外に送ってほしいという要望がある。

 社会連携で一番重要なのは地域との結びつき、地域をどのように再生させ、地域の課題をどのように解決していくか、そしてどのように活動に参加していくかである。大学同士は個別の研究などで結びつきがあるが、複合的にまとめていけば、パイはどんどん膨らんでいく。