国際成人力調査が基礎学力重視の必要性示す


 経済協力開発機構(OECD)は、このほど国際成人力調査(PIAAC)の結果を公表し、わが国は3分野のうち「読解力」と「数的思考力」で1位であることが分かった。

 教育水準の高さを証明

 OECD加盟国・地域のうち24カ国・地域の16歳から65歳までを対象に実施したもので、わが国の教育水準の高さが証明された形であり、明るい材料として喜びたい。

 OECDが2000年以来、3年ごとに15歳の生徒を対象に「数学的リテラシー」「読解力」などの調査のため実施してきた学習到達度調査(PISA)では、順位が下降傾向を示していただけに意外な結果である。その内容を冷静に分析し今後に生かす必要がある。

 わが国は他国と比べ中上位層が多くて下位層が少なく、上位と下位の得点差も小さいのが特徴となっている。

 このことで「読解力」が500点満点で平均296点、「数的思考力」が288点となり、いずれも2位のフィンランドを大きく引き離した。フィンランドは、PISAで常時、好成績を収めている国である。

 ただ、PIAACは各国で半年前後かけて実施され、全体で約16万人、わが国では5173人が調査に参加した。回答者の自宅などで専用のパソコンを用いて行うなど、一斉にテストをするPISAより大まかな調査といえる。

 「読解力」「数的思考力」の成績は、最高の「レベル5」から最低の「レベル1未満」までの6段階に分けられている。わが国は、いずれもレベル4、レベル3の割合は参加国最大だが、レベル5の割合は「読解力」ではフィンランド、オランダ、オーストラリアなどの方が大きかった。

 また、「数的思考力」でもフィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークなどの方が上位となっている。平均的に学力があることが今回の好結果をもたらしている。

 また16~24歳の若者に限れば、「読解力」ではフィンランドと、「数的思考力」ではオランダ、フィンランド、ベルギー、韓国などと統計的に有意差がないのが実情だ。

 OECD平均では、25~29歳の年齢層をピークに平均点が下降しているが、わが国では40~50代の教育水準の高さが好結果に繋がっており、伝統的に行われてきた基礎学力重視の教育効果が表れたといえよう。

 もっとも、今回の調査は原則パソコンを使って実施されたが、わが国では使用経験がないなどの理由から、紙で回答した割合が37%もあった。参加国の中で最低水準である。

 「ITを活用した問題解決力」では、パソコンで調査を受けた回答者の平均点はトップだったが、パソコンに習熟していない割合が若者でも小さくない状況は、今後において対処すべきである。

上位層の人材育成に課題

 平均点では好成績を収めたが、今回のPIAACで、トップレベルの人材育成の必要性、情報化社会で不可欠なパソコン習熟へのサポートなど課題も浮き彫りになったといえる。

(10月13日付社説)